10年間オーバーホールしなかった時計はどうなってしまうのか?

10年間オーバーホールしなかった時計はどうなってしまうのか?

愛用の腕時計を長く大切に使い続けるために欠かせないのが「オーバーホール」です。しかし、「10年に一度くらいで大丈夫?」と放置していて問題がないか気になった方もいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、時計修理を専門とする私たちが、オーバーホールの重要性や適切な頻度、そして実際に頼むときのポイントを詳しく解説します。

私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」は、原宿にある時計と宝石の修理専門店です。創業60年かつ年間30,000本以上の業界修理本数No.1の実績を誇り、千原ジュニアさんやトータルテンボス藤田さん、演歌歌手の五木ひろしさんなど多数の芸能人にもご利用いただいております。高級ブランドからアンティークまで幅広く対応しており、大手量販店で断られた修理にも対応できるため、オーバーホールを考えている方はぜひご利用ください。
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目次

時計のオーバーホールはなぜ必要なのか

「まだ動いているから大丈夫」と放置しがちですが、時計の内部では油切れやパーツの摩耗が着実に進行しています。見た目には分からなくても、精密機械である時計の内部では少しずつダメージが蓄積されているのです。

まずはオーバーホールの目的について確認しましょう。

時計内部の分解・洗浄と注油

内部に溜まった汚れを落とし、劣化した油を拭き取り、新しく注油することがオーバーホールの基本です。時計の内部には非常に精密な部品が組み込まれており、それらが摩擦によって少しずつ摩耗していきます。また、使用とともに時計油は劣化し、本来の潤滑機能を失っていきます。

これを怠ると歯車の摩耗やサビが進み、精度に大きく影響します。例えば、潤滑油が切れた状態で使い続けると、金属同士が直接擦れあうことになり、部品の寿命が急激に短くなります。また、時間の進み方が遅くなったり、時計が突然止まったりするトラブルも発生します。

防水性やパーツの点検・交換

パッキンやリューズなどの防水部品は経年劣化しやすく、放置すると湿気やホコリが入りやすくなります。特に防水機能のある時計では、パッキンの劣化により内部に水が侵入し、深刻な故障を引き起こす可能性があります。

オーバーホール時に交換しておくことで、大きな故障を未然に防げるのです。また、傷んだパーツを早めに発見し交換することで、より多くの部品が連鎖的に故障するリスクも減らせます。定期的な点検は、愛用の時計を長持ちさせるための投資と考えるべきです。

10年間オーバーホールしなかった時計はどうなってしまうのか

高級時計ブランドやメーカー修理センターでは、3〜5年に一度のオーバーホールを推奨しているケースがほとんどです。これは時計の寿命を最大限延ばすための適切な期間として設定されています。

「10年に1回」でも動いている場合もあるものの、突然の故障リスクや部品交換費が高額になるリスクも増加します。見た目には正常に動いているように見えても、内部では取り返しのつかない損傷が進行していることがあります。

メーカーが「3〜5年に一度」を推奨する理由

メーカーが定期的なオーバーホールを推奨するのには理由があります。定期的に注油とパーツ交換を行うことで、大きな故障を防ぐことができるのです。

精度低下や防水性能の劣化を最小限に抑えられるのも大きなメリットです。時計は精密機械ですから、わずかな狂いも積み重なれば大きな誤差となります。特に高級時計では、その精度の高さが価値の一部となっているため、性能維持は非常に重要です。

またオーバーホール履歴が残ると、中古市場での評価も高まりやすいという側面もあります。時計を資産と考える方にとって、適切なメンテナンス履歴は価値を維持・向上させる重要な要素なのです。

10年放置した場合に起こりうるトラブル

10年もの間オーバーホールをしないでいると、様々なトラブルが発生する可能性があります。

時計内部の潤滑油は一般に3~5年ほどで劣化し始め、油が劣化・乾燥すると歯車など金属部品同士が直接触れ合って摩耗し、時計の動作に悪影響を及ぼします。

そのため、「まだ動いているから」と10年近くノーメンテナンスで使い続けるのは推奨されません。実際にロレックス専門の技術者も、「10年に1回だけでは内部で油切れやサビ・摩耗が進行し、故障時には複数部品の同時交換が必要になるケースが多い」と指摘しています​。
» ロレックスのオーバーホールは10年に1回で大丈夫?オススメの頻度ってあるの?

逆に5年程度で定期的にオーバーホールしていれば、劣化した部品を早期に交換でき大きなトラブルを防げるため、結果的に時計のコンディションを長期間良好に保つことができます。

さらに、一度深刻な損傷が生じた部品は、修理しても完全には元の性能を取り戻せないこともあります。

オーバーホールを定期的にするメリット

オーバーホールを定期的にするメリット

高級時計は資産価値があるものも少なくありません。特に有名ブランドの時計は、適切に管理されていれば価値が上がることもあります。

定期的にメンテナンスすることで、時計の品質・価値をしっかり維持すべきでしょう。

故障リスクの低減

油切れやパーツ摩耗を早めに対処することで、突然の不具合や修理費用の高騰を防げます。時計の不調は突然訪れるものではなく、少しずつ進行していきます。定期的なオーバーホールは、こうした潜在的な問題を早期に発見し、対処するための重要な機会となります。

特に高価な時計や希少なモデルでは、部品の入手が困難なケースもあります。故障が深刻になる前に定期メンテナンスを行うことで、大規模な修理や部品交換の必要性を減らすことができるのです。

見た目・精度の維持

磨きやパーツ交換を行うことで、購入当初の外観や精度を保ち続けられます。時計は身につける宝飾品でもあるため、その美しさを維持することも重要です。オーバーホール時には、ケースやブレスレットの磨き直しも行われることが多く、見た目の美しさを取り戻せます。

精度に関しては、オーバーホールによって内部機構の調整が行われるため、時間のズレを最小限に抑えることができます。日差数秒から数十秒というレベルでも、積み重なれば大きな誤差となりますので、精度の維持は実用面でも大切です。

中古市場での評価UP

オーバーホール履歴がしっかり残っている時計は、中古として売却する際にも高い評価を得られやすいでしょう。時計のコレクターや中古市場では、時計の状態とメンテナンス履歴が重視されます。特に高級ブランドの時計では、定期的なメンテナンス記録が付加価値となることも少なくありません。

将来的に売却や譲渡を考えている方にとって、オーバーホールの記録は時計の価値を証明する重要な資料となります。たとえ当面は売却予定がなくても、将来の選択肢を広げるという意味でも、定期的なメンテナンスは検討する価値があるでしょう。

なぜ「10年に1回のペースでいい」という人もいるのか

なぜ「10年に1回のペースでいい」という人もいるのか

通常、時計用オイルは3〜4年経つと使用頻度にもよりますが、オイルが切れてきたり、汚れてきます。これがオーバーホールが推奨される主な理由です。

それでも時計は動いているため、ほとんどのお客様は時計が不調になったり止まった時に初めて修理を依頼されます。その結果、既に状態が悪化しており、修理代がかなりかかってしまうケースも少なくありません。

例えば、オメガの公式サイトでは、5~8年に一度のコンプリートメンテナンスを推奨しています。このため、使用状況やモデルによっては、10年に一度でも問題ないと考える人もいるかもしれません。

また、近年、潤滑油の品質が向上し、以前よりも劣化しにくくなっています。そのため、オーバーホールの間隔を以前よりも延ばせると考える人もいるようです。確かに技術の進歩により、時計の耐久性は向上していますが、それでも機械式時計の基本的な構造は変わっていないため、定期的なメンテナンスの必要性は変わりません。

ただし、長期間オーバーホールを行わないと、内部の油が劣化し、部品の摩耗が進行するリスクがあります。結果として、修理費用が高額になる可能性が高まるため、定期的なメンテナンスを行うべきでしょう。

「10年に1回のペース」はプロの私たちから見ると、推奨できません。短期的には費用を節約できるように感じるかもしれませんが、長期的には時計の寿命を縮め、より高額な修理費用がかかる可能性が高まるからです。

あるロレックスユーザーのケースでは、購入後10年以上一度もメンテナンスせず使い続けていた時計が突然止まって動かなくなり、修理に持ち込まれました。原因は油切れによるゼンマイ(主ゼンマイ)の破損で、オーバーホールとゼンマイ交換によってようやく動作が回復しています。幸い基本的な整備で直りましたが、このまま動かし続けていたらもっと広範囲に摩耗が進み、高額な部品交換に繋がっていたかもしれない、という事例があります。

別の方では、オーバーホールせず10年ほど使い続けた複数の腕時計が徐々に遅れが大きくなり、最終的には日常使用に支障が出るレベルに達したため重い腰を上げてまとめてオーバーホールに出した、という事例もあります​。

時計のオーバーホール先は正規店と修理店どっちがいいのか

オーバーホールを依頼する際、多くの方が「正規店」と「民間修理店」のどちらに依頼すべきか悩まれます。正規店は純正部品と公式のメンテナンス体制で安心感がある一方、費用や納期がネックとなることもあります。

民間修理店はリーズナブルなところが多いですが、技術力や信頼性を見極める必要があるでしょう。それぞれの特徴を理解して、ご自身の時計と状況に合った選択をすることが大切です。

正規店で修理すると安心は買える

正規店の最大のメリットは、純正部品が使われ、ブランドの公式サービスが受けられることです。メーカー直営または認定の修理センターでは、その時計ブランドに特化した専門知識と技術を持つスタッフが対応します。

さらに、保証期間やアフターサービスが充実していることが多いため、万一の際の対応も安心です。修理後のトラブルがあった場合でも、しっかりとした対応が期待できるでしょう。

代わりに、費用が高く、納期も長くなる傾向があります。有名ブランドの正規修理では、数ヶ月から半年以上待たされることも珍しくありません。また、古いモデルだと対応できない場合や、修理不可とされるケースもあり、特にビンテージや生産終了モデルの場合は注意が必要です。

民間修理点を利用するとリーズナブル

比較的リーズナブルな価格設定なのが民間修理店の魅力の一つです。同等の技術サービスを正規店より安価に受けられることも少なくありません。

場合によっては正規店よりも短い納期で受け取れるのも大きなメリットです。緊急で修理が必要な場合や、長期間手元から離したくない愛用品の場合は特に重要なポイントとなります。

古いモデルや特殊な修理にも対応してくれる可能性が高いのも、民間修理店の強みです。正規店では「修理不可」とされた時計でも、経験豊富な技術者がいる修理店であれば対応できることもあります。

一方で、ブランド公式の保証がなく、店舗ごとに技術力や使用部品の質に差があることは否めません。信頼できる修理店を選ぶためには、口コミや評判、実績などをしっかり調査することが重要です。

10年放置は避け、信頼できる修理店を選ぼう

はらじゅく時計宝石修理研究所

時計のオーバーホールは「まだ動くから」と後回しにすると、いつの間にか内部が深刻に劣化している可能性があります。外観からは分からない内部のダメージが、時計の寿命を確実に縮めていきます。

理想は3〜5年に一度の定期メンテナンスです。とくに高価な時計やアンティーク時計などは、修理履歴のある信頼できる業者に依頼するのがポイントとなります。長年の経験と実績を持つ修理店であれば、時計の状態を的確に判断し、最適なメンテナンスを提案してくれるでしょう。

私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」は60年にわたる豊富な修理実績と、高い技術力を持つ熟練スタッフがそろっているからこそ、他店で断られた修理にも対応可能です。口コミ件数の多さや全国No.1の修理本数など、実績が証明する安心感も強みのひとつです。時計を長く愛用したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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 この記事を書いた人        

⚪︎⚪︎のアバター 天野 一啓 はらじゅく時計宝石修理研究所 店長

2018年4月に時計宝石修理研究所へ入社。現在は「はらじゅく時計宝石修理研究所」の店長として、店舗運営と接客、修理対応を担う。厚生労働省認定の国家時計修理技能士資格を取得し、大阪府から時計技能最高優秀賞を受賞。

お客様の大切な想い出が詰まった時計やジュエリーに向き合い、安心して預けられる存在を目指す。スイスの老舗時計工具メーカー・BERGEON(ベルジョン)とのコンセプトショップも展開し、時計修理の魅力発信にも注力。

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