ヴァシュロンコンスタンタンのオーバーホール!料金や期間を解説

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野 一啓です。
世界三大時計の一つであるヴァシュロン・コンスタンタンは、世代を超えて受け継ぐにふさわしい至高の時計ですね。創業から260年以上一度も歴史を途絶えさせることなく続いてきたこのブランドは、まさに時計界の文化遺産と言えるでしょう。しかし、長く愛用するうえで避けて通れないのがメンテナンスの悩みではないでしょうか。
特にオーバーホールの料金がいくらかかるのかや、修理にかかる期間はどのくらいなのかといった点は、オーナー様にとって非常に気になるところだと思います。また、正規サービスに出すべきか、あるいは評判の良い民間修理店に依頼するべきかで迷われている方も多いはずです。
この記事では、そんな皆様の不安を解消するために、プロの視点から分かりやすく解説していきます。

この記事でわかること
- ヴァシュロン・コンスタンタンの正規修理と民間修理の料金や期間の違い
- オーバーシーズやフィフティーシックスなどモデルごとのメンテナンスのポイント
- ヴィンテージモデルや資産価値を維持するための注意点
- 信頼できる修理店の選び方とコストを抑える賢い方法
ヴァシュロンコンスタンタンのオーバーホールの基礎知識

まずは、ヴァシュロン・コンスタンタンを所有する上で知っておくべきメンテナンスの基本についてお話しします。「One of not many(少数精鋭)」を掲げる雲上ブランドだからこその、正規サービスの仕組みや、気になるコスト面の現実について、プロの視点で深掘りして整理していきましょう。
正規修理で並行差別はあるのか
高級時計のメンテナンスにおいて、購入者が最も懸念することの一つに「並行差別」という言葉があります。これは、正規販売店(ブティック)以外、例えば並行輸入店や海外のショップで購入した時計の場合、メーカーでの修理料金が通常よりも割高になったり、最悪の場合は修理そのものを断られたりする対応のことを指します。
結論から申し上げますと、現在のヴァシュロン・コンスタンタンにおいては、基本的に並行差別はありません。
これはオーナー様にとって非常に喜ばしいことです。正規ブティックで購入した個体であっても、並行輸入店や中古市場で購入した個体であっても、その時計が「真正品(本物)」であれば、分け隔てなくメーカー公式の「コンプリートサービス(オーバーホール)」を受けることが可能です。
期間はどのくらいかかるのか

次に気になるのが、愛機が手元から離れる「期間」です。ヴァシュロン・コンスタンタンのような数百のパーツからなる複雑なムーブメントを持つ時計は、一般的な時計よりも長期間のお預かりになる傾向があります。
正規コンプリートサービスの場合
正規サービスに依頼した場合、国内のテクニカルサービスで完結する修理内容であっても、見積もりから完了まで通常で約7週間から9週間程度かかります。これは、単に分解掃除をするだけでなく、スイス本国と同じ厳格な基準での動作テスト(パワーリザーブ検査や防水検査)に時間を割くためです。
さらに、部品の在庫が国内にない場合や、本国スイスの工房での対応が必要な「ヴィンテージモデル」「グランドコンプリケーション」などの場合は、3ヶ月から半年以上、場合によっては年単位の期間を要することも珍しくありません。
民間修理店の場合
一方で、私たちのような民間の時計修理専門店にご依頼いただいた場合は、スピード感が大きく異なります。部品の在庫状況にもよりますが、概ね5週間から6週間程度で納品させていただけることが多いです。
「結婚式などのイベントで使いたい」「なるべく早く手元に戻したい」という事情がある方は、国内に自社工房を持つ民間修理店に相談してみるのがスムーズな解決策になるかもしれません。
モデルごとのオーバーホール料金
ここでは、最も関心の高い「料金」について、正規サービスと一般的な民間修理店の相場を比較して見てみましょう。ヴァシュロン・コンスタンタンは2024年を含め、近年断続的に価格改定(値上げ)が行われており、それに伴いメンテナンスの「基本料金」も上昇傾向にあります。

| ムーブメントの種類 | 正規料金(目安) | 民間修理料金(目安) |
|---|---|---|
| クォーツモデル | 約 110,000円〜 | 約 77,000円〜 |
| 手巻き・自動巻き(3針) | 約 158,600円〜 | 約 87,000円〜 |
| クロノグラフ | 約 262,200円〜 | 約 99,000円〜 |
| コンプリケーション | 約 396,400円〜 | 要見積もり |
料金に関する重要な補足
上記の正規料金はあくまで「基本技術料」のスタート価格です。実際の見積もりでは、摩耗した歯車や劣化・腐食した針などの「部品代」が別途加算されます。正規サービスでは品質保持のため「予防的な部品交換」も積極的に行われるため、請求総額が基本料金の1.5倍〜2倍になるケースも少なくありません。
ご覧の通り、民間修理店を利用することで、費用を正規料金の60%〜80%程度に抑えることが可能です。3〜5年ごとの定期的なメンテナンスコスト(ランニングコスト)を考えると、この差額は決して無視できない金額ですよね。
特に「パトリモニー」や「トラディショナル」などのシンプルな手巻き・自動巻きモデルであれば、民間修理店でも安定した品質で整備できる可能性が高く、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。

壊れやすい使用環境と注意点

「雲上時計」は、芸術的な美しさを追求した繊細な工芸品です。そのため、ロレックスのプロフェッショナルモデルのようなタフな使い方を想定した設計とは、少し事情が異なります。修理の現場で私たちがよく目にするトラブルの原因は、大きく分けて「磁気」「水」「衝撃」の3つです。
現代社会の天敵「磁気帯び」
特に現代社会で気をつけたいのが「磁気帯び」です。スマートフォン、パソコン、タブレットのスピーカー部分、バッグのマグネット留め具などに時計を近づけると、内部のヒゲゼンマイや歯車が磁気を帯びてしまいます。
磁気を帯びると、「急に時間が進むようになった」「精度が安定しない」といった不具合を引き起こします。オーヴァーシーズの一部のモデルなどは耐磁構造を持っていますが、薄型のドレスウォッチなどは無防備であることが多いため注意が必要です。(出典:一般社団法人 日本時計協会『時計の大敵「磁気」』)
意外と怖い「水入り・湿気」
また、ヴァシュロンのドレスウォッチ(パトリモニーなど)は、防水性能が日常生活防水(3気圧)レベルであることが多いです。これは「汗や洗顔時の水滴には耐えられる」程度であり、水仕事や激しい雨には耐えられません。
防水パッキンはゴム製で、使用していてもいなくても経年劣化で硬化します。「壊れていなくても3〜4年に一度」は点検に出してパッキンを交換しないと、気付かないうちに内部に湿気が入り、文字盤の変色やムーブメントのサビ(錆)を招いてしまいます。こうなると修理費用は跳ね上がってしまいます。
純正ベルトの値段と維持費
オーバーホール代金と合わせて考えておきたいのが、ベルト(ストラップ)の維持費です。ヴァシュロン・コンスタンタンの純正アリゲーターストラップは、厳選された最高級の革が使用されており非常に美しいですが、消耗品でありながら値段は5万円〜10万円ほどと高額です。
夏場に汗をかいたまま使用し続けると、革ベルトは1〜2年で寿命を迎えてしまいます。これを毎回純正品で交換していると、維持費はかなりの負担になりますよね。
コストを抑えたい場合は、バックル(尾錠やDバックル)などの貴金属パーツはそのまま使用し、革部分だけを高品質な社外製の革ベルトにするのが賢い選択です。当社でも、純正の風合いに引けを取らないオーダーメイドの革ベルトをご提案可能です。
ブレスレットモデルの注意点
オーヴァーシーズなどのブレスレットモデルの場合、コマとコマの隙間に溜まった汚れが「研磨剤」の役割をしてしまい、金属を摩耗させて「伸び(ガタつき)」を生じさせることがあります。ブレスレット全体の交換になると数十万円かかりますので、定期的な超音波洗浄が寿命を延ばすカギとなります。

モデル別ヴァシュロンコンスタンタンのオーバーホール

ヴァシュロン・コンスタンタンと一口に言っても、ラグジュアリースポーツの「オーヴァーシーズ」から、究極のドレスウォッチ「パトリモニー」、歴史的な「ヒストリーク」まで様々です。ここからは、代表的なモデルごとのメンテナンスのポイントをさらに深掘りしていきます。
オーバーシーズのメンテナンス
現在、ブランドの中で最も人気があり、かつ最も稼働率が高いのが「オーヴァーシーズ」です。このモデルのメンテナンスにおける肝は、なんといっても防水性能の維持と、特徴的な外装の仕上げにあります。
難易度の高いポリッシュ(研磨)
オーヴァーシーズのベゼルは、ブランドのシンボルである「マルタ十字」を模した複雑な形状をしています。平面と曲面、そして鏡面(ポリッシュ)とサテン(ヘアライン)の仕上げが入り組んでおり、このエッジ(角)を立たせたまま研磨するには、極めて高度な技術が求められます。
経験の浅い職人が安易に磨くと、角が丸くなってしまい(ダレる)、オーヴァーシーズ特有のシャープで力強い美しさが損なわれてしまいます。民間修理店に依頼する際は、外装仕上げの技術に定評があるかどうかを必ず確認すべきです。
また、第2世代などは耐磁性能を高めるためにムーブメントが「軟鉄製インナーケース」に守られていますが、オーバーホールの際はこれらも分解して洗浄し、磁気を除去する必要があります。
フィフティーシックスの維持
2018年に登場し、ヴァシュロンの中では比較的手の届きやすい価格帯で新たなファン層を獲得した「フィフティーシックス」。レトロモダンなデザインが魅力ですが、メンテナンスに関してはいくつか知っておくべき点があります。
このモデル(特に3針オートマティック)は、リシュモングループ内の他ブランド(カルティエやジャガー・ルクルトなど)と共有するベースムーブメント(Cal.1326など)を使用しているケースがあります。これは修理の観点から見ると、実は「メリット」でもあります。
完全な自社製マニュファクチュールムーブメントに比べて、部品の設計が標準化されているため、メンテナンス性が良く、民間修理店でも対応しやすいモデルと言えるからです。ただし、ケース形状や風防の構造は独特ですので、外装部分の傷取りなどはやはり実績のある工房に依頼することをおすすめします。
ヴィンテージモデルの修復
1755年の創業から一度も歴史が途絶えていないヴァシュロン・コンスタンタンには、数々の素晴らしいヴィンテージウォッチが存在します。しかし、こうした古い時計はメーカーで「部品枯渇」を理由に通常の修理を断られたり、スイス本国の修復部門「レ・キャビノティエ」による「レストアサービス」扱いとなって、数百万円の見積もりが提示されたりすることも珍しくありません。
そうした「修理難民」となってしまった時計こそ、技術力のある民間修理店の出番です。メーカーに在庫部品がなくても、旋盤などの工作機械を使って部品を新しく作成(別作)することで、再び時を刻めるようにできる場合があります。
諦める前にご相談を
「祖父から譲り受けた大切な時計が動かない」「他店で断られてしまった」という場合でも、一度ご相談ください。私たちのような修理専門店では、古き良き時計を蘇らせることに情熱を注いでおり、部品作成による修復実績も豊富です。
買えないモデルの資産価値維持
昨今の世界的な時計ブームにより、オーヴァーシーズの一部モデルなどは正規店では「買えない」状況が続いています。入手困難なモデルほど、二次流通市場での価値は高騰し、資産としての側面が強くなっています。
将来的な売却や、次世代への継承を考えている場合、オーバーホールの「証明書(修理明細)」は非常に重要です。「いつ、どこで、どのようなメンテナンスを行ったか」という記録は、その時計が適切に管理されてきたことの証明となり、リセールバリュー(再販価値)を大きく左右します。
もちろん、メーカー公式の修理明細書が最も効力があるのは事実ですが、信頼できる有名修理店の詳細な作業報告書も、しっかりとメンテナンスされている証としてプラスに評価されることが一般的です。特に、ブロックチェーン技術を用いたデジタルパスポートなどが普及しつつある今、メンテナンス履歴の透明性はより一層重要になってきています。
民間修理店を選ぶメリット

最後に、私たちのような民間修理店を選ぶメリットについて、改めて整理しておきます。正規サービスが「安心と純正の極み」であるならば、民間修理は「実用とコストパフォーマンスの最適解」と言えるでしょう。
- 圧倒的なコストパフォーマンス:正規料金の約半額〜8割程度の費用で、高品質なオーバーホールが可能です。浮いた費用でベルトを新調することもできますね。
- 納期の短縮:国内に自社工房を持っていれば、輸送期間などのロスがなく、メーカーよりも早く(約5〜6週間で)お返しできます。
- 柔軟なサービス対応:「ケースの傷は思い出として残したいから磨かないでほしい」「文字盤は交換したくない」といった、オーナー様の細かなご要望にお応えしやすいのも強みです。
もちろん、文字盤や針などの外装部品が大きく破損しており、どうしてもメーカー純正部品が必要な場合は正規サービス一択になることもあります。しかし、内部の機械的な不具合(油切れ、遅れ、進み)や定期的な分解掃除であれば、技術力のある民間修理店は非常に合理的で賢い選択肢となります。
まとめ:
ここまで、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーバーホールについて、料金や期間、モデル別の注意点などを詳しく解説してきました。世界最高峰の時計だからこそ、適切なタイミングで、適切なメンテナンスを施してあげることが、その価値を永続させる唯一の方法です。
「正規の見積もりが高すぎて驚いた」「もっと早く修理を終わらせたい」「古いモデルで修理を断られた」など、もしヴァシュロンコンスタンタンのオーバーホールでお困りであれば、ぜひ一度「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。
当店では、国家資格を持つ熟練の時計修理技能士が、お客様の大切な一本を丁寧に診断し、ご予算やご要望に合わせた最適な修理プランをご提案いたします。

