IWCオーバーホールの料金や頻度は?正規と民間の違いを解説

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野一啓です。
質実剛健な作りと洗練されたデザインで、多くの時計ファンを魅了してやまないIWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)。「ポルトギーゼ」や「パイロットウォッチ」など、一生モノとして購入された方も多いのではないでしょうか。
しかし、長く使い続けるために避けて通れないのがオーバーホール(分解掃除)です。いざメンテナンスに出そうと思ったとき、「正規サービスの料金は値上げで高くなっているの?」「並行輸入品だと差別されて修理代が変わる?」「おすすめの頻度や期間は何年くらい?」といった疑問や不安が尽きないものですよね。
大切な時計だからこそ、後悔しない選択をしていただきたい。今回は、時計修理の現場に立つ私の視点から、IWCのオーバーホールに関する現状と、賢い依頼先の選び方について詳しくお話しします。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事でわかること
- 正規サービスの最新料金傾向と値上げの影響
- モデルごとの適切なメンテナンス頻度とリスク
- 民間修理業者を活用するメリットと注意点
- ヴィンテージや並行輸入品における修理事情
iwcのオーバーホールが必要な理由と正規サービスの現状

IWCは「Probus Scafusia(シャフハウゼンの優秀なクラフツマンシップ)」を掲げ、非常に高品質な時計を製造していますが、精密な機械式時計である以上、定期的なメンテナンスは欠かせません。まずは、現在のIWCを取り巻く正規サービスの状況や、基本的なメンテナンスの考え方について整理していきましょう。
正規の値上げ動向と最新の料金目安
ここ数年、世界的なインフレーションに加え、スイスフラン高や人件費の高騰により、多くのラグジュアリーウォッチブランドでサービス料金の値上げが続いています。IWCも例外ではなく、2024年から2025年にかけて段階的な価格改定が行われたとの情報もあり、以前よりも維持費が高くなっているのが現状です。
IWCの正規コンプリートサービス(オーバーホール)の料金目安としては、以下のようなイメージを持っておくと良いでしょう。
| モデルカテゴリー | 以前の目安 | 2024-2025年 現在の目安(税込) |
|---|---|---|
| 3針モデル(ポートフィノ、マーク18等) | 約77,000円 | 約94,700円〜 |
| クロノグラフ(ポルトギーゼ、パイロット等) | 約96,800円 | 約127,800円〜 |
| 自社製ムーブメント搭載機(7Days等) | 約124,300円 | 約155,000円〜 |
※上記は執筆時点での推定価格であり、モデルや状態によって変動します。
特に、近年のIWCは「汎用ムーブメント」から「自社製ムーブメント(マニュファクチュール)」への移行を積極的に進めています。自社製ムーブメントは高性能でブランドの格を高める要素ですが、その分、構造が複雑になり、メンテナンス技術料も高額になる傾向があります。「昔はもっと安かったのに」と驚かれる方も多いですが、これはIWCに限らず時計業界全体のトレンドでもありますね。
一般的な時計のオーバーホール相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
時計のオーバーホールの値段・相場はどれくらいか?メーカーごとに解説
頻度や期間は何年が目安か
「今のIWCは性能が良いから、10年くらい何もしなくても大丈夫」という噂を耳にすることがありますが、修理屋の立場からするとその認識は極めて危険です。
オイルの寿命は3〜4年
IWCの機械内部には、摩擦を減らすために数種類の潤滑油が注されています。現在の化学合成油は優秀ですが、それでも3年から4年ほどで酸化し、揮発したり凝固したりして潤滑性能が低下します。油が切れた状態で時計を動かし続けると、金属パーツ同士が直接擦れ合う「摩耗」が発生し、最終的には高額な部品交換が必要になってしまいます。
防水パッキンの「5年限界説」
また、最近の「マーク20」などの新型ムーブメントは、シリコン部品の採用などでパワーリザーブが長く、磨耗にも強くなっています。しかし、ケースの裏蓋やリューズに使われている「ゴムパッキン」は、時計を使っていてもいなくても経年劣化で硬化します。
IWCの公式サイトや一般的な推奨サイクルとしては、3年から5年に一度のオーバーホールが理想的とされています。たとえ時計が元気に動いていたとしても、5年以上放置すると気密性が失われ、湿気が入り込み、文字盤の腐食や内部のサビにつながるリスクが急激に高まります。
メンテナンスを怠った際のリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
10年間オーバーホールしなかった時計はどうなってしまうのか?
高いと感じる方へ贈るおすすめの依頼先
正規サービスの安心感は絶対的ですが、1回のメンテナンスに10万円〜20万円近い出費は、正直痛いと感じる方も多いはずです。また、正規サービスは国内のリシュモンテクニカルセンターで対応できない場合、スイス本国送りとなり、納期が6ヶ月以上かかることも珍しくありません。
そこでおすすめなのが、技術力の高い民間修理専門店(時計修理業者)を利用することです。
民間修理業者に依頼するメリット
- コストダウン:正規料金の半額〜7割程度(5万円〜10万円台)で済むことが多い。
- 納期の短縮:部品在庫があれば、最短3週間〜6週間程度で完了する。
- 柔軟な対応:正規では強制交換となる「傷のある針」や「文字盤」を、希望によりそのまま残すことができる。
ポルトギーゼやパイロットウォッチの維持費
IWCの二大看板である「ポルトギーゼ」と「パイロットウォッチ」ですが、搭載しているエンジンの違いで維持費が大きく変わります。ご自身のモデルがどちらのタイプか把握しておくと、予算組みがしやすくなります。
汎用ムーブメント搭載モデル(維持費:安)
例えば、少し前の「ポルトギーゼ・クロノグラフ(Ref.3714)」や「マーク18」「ポートフィノ・オートマティック」などは、汎用ムーブメントをベースにしています。
これらは世界中で部品が流通しており、構造も熟知されているため、民間修理店であれば3万円〜8万円台で整備できることも多く、維持費は安く抑えられます。
自社製ムーブメント搭載モデル(維持費:高)
一方、現行の「ポルトギーゼ・クロノグラフ(Ref.3716)」や「ポルトギーゼ・オートマティック(7Days)」などは、IWCが独自開発した完全自社製ムーブメントです。
これらは部品が特殊で入手が難しく、民間業者でも対応できる店舗が限られたり、7万円〜14万円程度の追加料金がかかったりするケースがあります。「裏蓋がスケルトン(シースルーバック)」になっているモデルは、自社製の可能性が高いため、見積もりの際は注意が必要です。
並行輸入や中古でも並行差別がない理由
高級時計の世界には「並行差別」という言葉があります。正規代理店以外で購入した時計(並行輸入品)に対し、メーカーが修理受付を拒否したり、修理料金を通常料金の1.5倍〜2倍に設定したりする差別的な措置のことです。
しかし、ご安心ください。IWCには並行差別が一切ありません。
IWCのリシュモングループの方針
IWCが所属する「リシュモングループ(カルティエやパネライ等も所属)」は、グローバルでサービス基準を統一しています。そのため、海外で購入した時計や、並行輸入店、中古ショップで購入した個体であっても、日本の正規カスタマーサービスで「正規購入品と同じ料金・同じ納期・同じクオリティ」でメンテナンスを受けることができます。
この寛容なスタンスこそが、IWCの中古市場での人気を支え、リセールバリューの維持にも貢献している大きな理由の一つですね。
保証書なしでも正規でどこで受けるべきか
「ネットオークションで買ったから保証書がない」「引越しで紛失してしまった」というご相談もよくいただきます。
IWCの場合、コンプリートサービス(有償修理)を受ける際に、保証書(ギャランティーカード)の提示は必須ではありません。もちろん、購入から2年以内(My IWC登録で最大8年)の「無償修理(自然故障への保証対応)」を受けるには保証書が絶対に必要ですが、通常のメンテナンスでお金を払って依頼する場合は、時計本体のみをIWCブティックや正規取扱店、またはカスタマーサービスへ送付すれば受け付けてもらえます。
盗難品リストには注意
ただし、IWCはシリアルナンバーで個体を管理しています。過去に盗難届が出ている個体と一致した場合、修理を拒否されるだけでなく、警察への通報などの対応が取られる可能性があります。中古購入時は、出処が確かなショップを選ぶことが大切です。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
iwcのオーバーホールを依頼する際のモデル別注意点

IWCの時計は、デザインコードが変わらなくても、中身の機械が全く異なる「世代交代」が頻繁に行われています。ここでは主要モデルごとの構造的な違いや、修理依頼時に気をつけておきたいポイントを解説します。
マーク12からマーク20までの構造的な違い
パイロットウォッチの代名詞「マークシリーズ」は、世代によってメンテナンスの難易度とコストが全く異なります。
- マーク12(Mark XII): ジャガー・ルクルト製の高級ムーブメント(Cal.889ベース)を搭載しており、非常に繊細で調整が難しいモデルです。部品の入手も年々困難になっており、民間では「要見積もり」や「正規推奨」となることが多いです。
- マーク20(Mark XX): 最新モデルであるマーク20は、リシュモングループ傘下のヴァルフルリエと共同開発した自社製「Cal.32111」を搭載しています。パワーリザーブが120時間(5日間)と驚異的ですが、最新ムーブメントゆえに、民間修理業者にはまだ部品供給や技術ノウハウが行き渡っていない場合があります。
マーク15やマーク16とマーク18の比較
逆に、私たちのような修理業者から見て、メンテナンス面で最も「優等生」と言えるのが、マーク15、マーク16、マーク17、マーク18の世代です。
これらのモデルは、部品の手配が非常にしやすく、費用を抑えて高品質なオーバーホールを提供することが可能です。 「長く、安く、安心して使い続けたい」という方には、この世代のモデルが維持費の面で最適解と言えるかもしれません。
クロノグラフやアクアタイマーの防水性能
ダイバーズウォッチである「アクアタイマー」や、プッシュボタンを持つ「クロノグラフ」モデルは、防水性能の維持が生命線となります。
オーバーホールの際は、単に機械を洗うだけではありません。裏蓋のパッキンに加え、リューズパッキン、クロノグラフのプッシュボタン内部のパッキン、ガラスパッキンなど、すべての消耗ゴム部品を交換し、専用の試験機で厳密な防水テストを行う必要があります。
特にアクアタイマーの「インナーベゼル回転機構」などは、独自のギアシステムを持っており構造が複雑です。防水検査機を持たない小規模な修理店では対応できないことがあるため、必ず「防水保証」をしっかりと付けてくれる設備レベルの高い業者を選ぶことが大切です。
インジュニアやヨットクラブの特殊な機構
ジェラルド・ジェンタのデザインで知られる「インジュニア」や、優雅なスポーツモデル「ヨットクラブ」も人気ですが、これらも注意が必要です。
インジュニアの耐磁構造
インジュニアの最大の特徴は、軟鉄製インナーケースによる強力な耐磁性能です。ムーブメントが二重のケースに守られている構造のため、分解には特殊な手順や専用工具が必要になる場合があります。
ヨットクラブのフライバック機能
ヨットクラブに搭載されている「フライバック・クロノグラフ」機能は、計測中にリセットボタンを押すと瞬時に針がゼロに戻り再計測を始める複雑機構です。部品点数が非常に多く、カムやレバーの調整に高度な技術を要します。経験の浅い技術者が触ると、針のズレや動作不良を起こすリスクが高いため、実績のある店舗に依頼しましょう。
オールドインターやヴィンテージの魅力とリスク
1950年代〜70年代の「オールドインター」は、独自のペラトン式自動巻き機構などを搭載し、今でも高い評価を得ています。しかし、正規サービスに出す際は特有のジレンマが存在します。
「お魚リューズ」交換問題
ヴィンテージIWCのファンの間で象徴とされるのが、魚のマークが刻印されたリューズ(通称:お魚リューズ)です。
正規サービスでは「機能の完全回復」が最優先されるため、防水テストでリューズの劣化が確認されると、強制的に現行の「IWCロゴ(Probus Scafusia)」入りリューズに交換されてしまいます。交換された古いお魚リューズは回収・廃棄されることが多く、時計のオリジナリティ(当時の姿)が失われることを嫌うコレクターの方は、あえて技術力のある民間修理店を選び、「リューズ交換なし(非防水扱い)」を条件に内部修理のみを依頼されるケースが多いです。
パーペチュアルカレンダーやダヴィンチの複雑さ
「ダヴィンチ」や「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー(永久カレンダー)」のような、超複雑機構(グランドコンプリケーション)は、オーバーホールの最高峰です。
これらは数百もの微細な部品が連動しており、ムーブメントの調整だけで数週間を要することもあります。正規料金でも20万円〜50万円以上かかることが一般的です。正直に申し上げますと、これらの超複雑時計に関しては、民間修理業者でも対応できる職人は国内に数えるほどしかいません。 もし民間に依頼をご検討される場合は、その店舗が複雑時計の修理実績を明確に持っているか、万が一の際の補償体制はどうなっているかを、事前に入念に確認してください。
東京の新宿でiwcのオーバーホールならお任せ
IWCの時計は、適切なパートナー(修理業者)を見つけ、定期的なケアを施すことで、親から子へと受け継ぐことができる素晴らしい「資産」です。「正規サービスの絶対的な安心感」を選ぶか、「民間サービスのコストパフォーマンスと柔軟性」を選ぶか、ご自身のスタンスや時計の状態に合わせて選んでみてください。
もし、東京・新宿エリア(原宿・表参道エリア含む)で、IWCのオーバーホールについて迷われているのであれば、ぜひ一度「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。
当店では、IWCの汎用モデルから自社製モデルまで精通した熟練の職人が、お客様の大切な時計の状態に合わせて最適なメンテナンスプランをご提案いたします。「とりあえず見積もりだけ知りたい」「リューズは交換したくない」といったご相談も大歓迎ですので、お買い物ついでにお気軽にお立ち寄りくださいね。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
