エルメスの時計修理(オーバーホール/電池交換)はどこに依頼がおすすめか

エルメスは、1837年にパリで馬具工房として創業して以来、卓越した職人技と時代を超える華やかさで世界中の人々を魅了してきました。
エルメスの精神は時計製造にも受け継がれ、単なるファッションアイテムとしてだけでなく、スイスの伝統技術とエルメス独自の美しさが組み合わさった、身につける芸術品とも言える時計を生み出しています。

「Hウォッチ」の大胆なフォルム、「ケープコッド」の優雅な曲線、「アルソー」の独創的なデザインなど、エルメスの時計は持つ人の個性を引き立てます。

しかし、どんなに優れたエルメスの時計であっても、その輝きと精度を永く保つためには、定期的なメンテナンスと適切な修理が不可欠です。

ここでは、大切なエルメスの時計を長く愛用するために、修理の種類と費用相場、安心して修理に出すための注意点、そして日頃のメンテナンス方法について解説します。

なお、私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」は、原宿で創業60年以上の歴史を持つ時計と宝石の修理専門店です。年間30,000本以上という業界トップクラスの修理実績を誇り、千原ジュニア様やトータルテンボス藤田様といった多くの著名な方々からもご愛用いただいております。

国家資格を持つ職人が、大手量販店で断られた難しい修理にも対応できる高い技術力で、あなたの大切な時計を丁寧にメンテナンスいたします。
» はらじゅく時計宝石修理研究所の詳細へ

目次

エルメスの時計修理(オーバーホール/電池交換)はどこに依頼したらいいのか

エルメスの時計を修理に出す場合、主に「エルメス正規サービス」と「時計修理専門店」の2つの選択肢があります。

それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況や希望に合わせて最適な依頼先を選びましょう。

エルメス正規サービスでの修理

エルメスのブティックに直接持ち込むか、公式サイトを通じてオンラインで修理を申し込むことができます。

正規サービスを利用する最大のメリットは、エルメス認定の専門技術者による、純正部品を用いた修理を受けられるという安心感です。エルメスが定める品質基準に基づいた、信頼性のあるサービスが期待できます。

ただし、一般的に費用は高価で、納期も長くなる傾向があります。

古いモデルや並行輸入品など、状態によっては修理を受け付けてもらえないケースもあります。

エルメスアフターセールスカウンターとは

エルメスでは、購入後の製品に対するアフターサービスも正規サービスの一環として提供しています。

日本国内には、エルメス製品のリペアやケアサービスに特化した「エルメス アフターセールスカウンター」が大阪梅田にあり、時計以外の相談も可能です。

また、通常購入日から5年間の保証が付帯しています。

時計修理専門店での修理

街の時計修理店や、インターネットで郵送・宅配修理を受け付けている専門店に依頼する方法です。

時計修理専門店では、正規サービスと比較して修理費用を抑えられたり、納期が短縮されたりする傾向があります。

また、正規サービスで対応できない古いモデルや並行輸入品の修理に対応してくれる場合もあります。

ただし、店舗によって技術力にばらつきがあるため、信頼できる店舗を選ぶことが重要です。モデルによっては純正部品の入手が困難な場合があり、その際は代替品や社外品での修理が提案されることがある点も考慮しましょう。

修理後の保証も店舗によって異なりますので、事前に必ず確認しましょう。

修理費用を抑えたい方や、比較的早く修理を完了させたい方は、信頼できる時計修理専門店の利用を検討すると良いでしょう。

エルメス正規サービスと時計修理専門店の比較

特徴エルメス正規サービス時計修理専門店
メリット安心感、純正部品、専門技術、品質保証、公式アフターサービス費用を抑えられる可能性、短納期の場合あり、正規で断られた修理に対応できる可能性
デメリット費用が高い傾向、納期が長い場合あり、受付不可の場合あり技術力にばらつきあり、純正部品保証なしの場合あり、修理後メーカー修理不可の可能性
納期目安数週間~数ヶ月数日~数週間(内容による)
費用目安高め正規サービスより抑えられる場合が多い
保証あり(国際保証、修理保証)店舗による(要確認)
こんな人におすすめ品質・安心感重視、純正部品希望、比較的新しいモデル、保証活用費用・納期重視、正規で断られたモデル

エルメスの時計修理の種類と費用相場

エルメスの時計の修理費用は、修理の種類や時計の状態によって大きく異なります。

ここでは、一般的な修理の種類と費用相場について解説します。

エルメスの時計におけるオーバーホール(分解掃除)

オーバーホールは、機械式・クォーツ式を問わず、定期的に行うべき重要なメンテナンスです。時計を分解し、部品の洗浄、交換、調整、注油、再組立、精度チェック、防水テストなどの作業を行います。

エルメス公式では機械式・クォーツ式ともに5年に1度を推奨していますが、一般的には機械式3~5年、クォーツ式5~7年が目安とされます。

費用相場は依頼先によって異なり、正規サービスではモデルにより異なりますが、機械式5万円〜、クロノグラフ8万円〜が目安となります。

一方、時計修理専門店では、クォーツ式で2万円~4万円程度、機械式(自動巻き)で3万円~6万円程度が目安ですが、複雑機構の場合は高額になります。

オーバーホールを怠ると、時計内部の潤滑油が劣化し、時間のずれや機能不良の原因となります。

また、部品が摩耗し、故障のリスクが高まり、結果的に修理費用が増加する可能性もあります。

最悪の場合、時計が完全に動かなくなってしまうこともありますので、定期的なオーバーホールが重要です。

こちらは腕時計の使用中、止まってしまったとの事で私たちがお預かりしたものです。内部に油劣化・汚れがございましたので、しっかりと分解掃除をいたしました。

修理日数は約1ヶ月で、費用は74,030(税込)でした。

エルメスの時計の電池交換

クォーツ式のエルメスの時計は、電池が動力源であるため、電池が消耗すると交換が必要になります。電池交換の費用相場も、依頼先によって異なります。

費用相場は、正規サービスで1万円~2万円程度、時計修理専門店で2,000円~5,000円程度が目安です。

電池切れのまま放置すると液漏れを起こし内部部品を腐食させる可能性があるため、早めの交換が重要です。

また、防水モデルの場合は、電池交換と同時に防水性能を維持するためのパッキン交換や防水検査を行うことが推奨されるのですが、これには別途費用がかかります。

エルメスの時計の部品交換(ガラス、ベルト、リューズなど)

腕時計の部品交換では、落下や経年劣化による、ガラス(風防)の傷・割れ、ベルトの破損・劣化、リューズの不具合などに対応します。

その際の費用は部品や作業内容によって大きく異なります。

時計修理専門店での費用相場目安としては、ガラス交換が1万円~2万円程度(特殊形状やサファイアガラス等は高額に)、リューズ交換が1万円~2万円程度です。

ベルト交換は素材やデザインで大きく変動し、純正レザーベルトは数万円~、社外品なら数千円から選択肢があります。

正規サービスでは原則として純正部品が使用され、これは時計の価値を維持する上で望ましい選択です。修理専門店でも純正部品を使用する場合が多いですが、入手困難な場合や価格が高騰している場合には社外品を提案されることもあります。

ただし、純正品以外の部品を使用すると、時計の資産価値に影響が出たり、将来的に正規サービスでの修理が受けられなくなったりする可能性があるため、メリット・デメリットを理解した上で選択する必要があります。

エルメスの時計の磁気抜き

時計が磁気を帯びると、時間の精度が狂ったり、止まってしまうことがあります。磁気帯びは、スマートフォン、パソコン、磁気ネックレスなど、身の回りにある磁気を発する製品に時計を近づけることで発生します。

磁気抜きは、専用の機械(脱磁器)を使用して時計に帯びた磁気を除去する作業です。

時計修理専門店で依頼した場合、費用相場は1,000円程度です。オーバーホールを依頼した際には、磁気抜きがサービスに含まれている場合もあります。

磁気帯びを防ぐためには、普段から磁気を発する製品に時計を近づけないように注意することが大切です。

エルメス特有の修理とメンテナンス

エルメスの時計は、極端に複雑な機構を持つモデルは少ないものの、独自のデザインや構造を持つモデルがあります。

「アルソー」の鐙型ケースや「ケープコッド」の曲線的なケースなど、デザインによっては外装の研磨や修理に専門的な配慮が必要な場合があります。

近年では「アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ」(ムーンフェイズ)のような複雑なモデルも登場しており、これらの修理は正規サービスや高度な技術を持つ専門店への依頼が必須です。

また、過去のモデル「ノマード」(オートクォーツ)などは正規サービスでの修理対応が終了している場合があり、修理可能な専門店を探す必要があります。

エルメスの時計を安心して修理するための注意点

大切な時計を安心して修理に出すために、いくつか確認しておきたいポイントがあります。

修理期間の確認

修理にかかる期間の目安も事前に確認しましょう。

エルメスの正規サービスでは数週間から数ヶ月、私たちのような時計修理専門店では数日から数週間が一般的ですが、修理内容や部品の在庫状況によって変動します。

特に急ぎの場合や、使用したい予定がある場合は、その旨を伝えておくと良いでしょう。

修理保証の内容確認

修理後の保証の有無と内容についても、依頼前に必ず確認が必要です。

正規サービスでは通常1年程度の修理保証が付くことが多いですが(国際保証とは別)、修理専門店の場合は店舗によって保証期間や保証内容が異なります。保証が付かない場合や期間が短い場合もあります。

保証期間はもちろん、どのような不具合が保証対象となるのか(修理箇所と同じ原因か、自然故障かなど)、そして保証対象外となるケース(通常の使用による摩耗、事故、不適切な扱いによる故障など)を理解しておくことが重要です。

信頼できる時計修理店の選び方

信頼できる修理店を選ぶためには、いくつかのポイントがあります。まず、エルメスを含む、修理を依頼したいブランドの修理実績が豊富かどうかを確認しましょう。

実績のある店舗は、ブランド特有の構造や部品に関する知識・技術が高い可能性があります。

次に、国家資格(時計修理技能士)を持つ技術者が在籍しているかも、技術力を判断する上で参考になります。

エルメスの時計を長く使うためのメンテナンス

日頃のお手入れと定期的なプロのメンテナンスで、エルメスの時計を永く美しく保ちましょう。

日頃のお手入れ

日常的なケアとして、まず柔らかく乾いた布(マイクロファイバークロスなど)で時計全体、特にケース裏やブレスレット(ストラップ)を優しく拭き、汗や皮脂汚れを取り除くことを習慣にしましょう。

汚れがひどい場合は、固く絞った濡れ布で拭き、その後乾拭きで水分を完全に除去します。ただし、非防水モデルは水濡れ厳禁です。

使用する上では、水・湿気(特にレザーストラップ)、強い衝撃、磁気(スマートフォン、PC、磁気アクセサリーなどから遠ざける)、極端な温度変化、化学物質(香水、化粧品、洗剤など)、長時間の直射日光などを避けるように注意しましょう。

保管方法

時計を保管する際は、高温多湿や直射日光を避け、風通しが良く、磁気の影響がない安定した場所を選びましょう。

購入時の箱や時計専用ケースでの保管が理想的です。複数の時計を保管する場合は、互いに接触して傷つかないように間隔を空けてください。

機械式時計は、長期間使用しない場合でも定期的にゼンマイを巻き上げることで内部の油の固着を防ぐ効果があります。

クォーツ式時計は、長期間使用しない場合は電池の液漏れリスクを考慮し、エルメス推奨の保管方法を確認するか、専門家に相談の上で電池を抜いておくことを検討しましょう。

定期的なメンテナンス

日頃のお手入れに加え、プロによる定期的なメンテナンスも時計の性能維持と寿命延長には不可欠です。

オーバーホール(機械式3~5年、クォーツ式5~7年目安、エルメス推奨は5年)はもちろん、エルメスが推奨する2年ごとの防水検査も重要です。

必要に応じて、専門家によるクリーニングやブレスレット(ストラップ)の点検なども行うと良いでしょう。

定期的なメンテナンスは、予期せぬ故障を未然に防ぎ、結果的に修理費用を抑えることにも繋がります。

エルメスの時計でよくあるトラブル

エルメスの時計は、モデルごとに特有の魅力がありますが、使用状況や経年変化により、トラブルが起こることがあります。代表的なモデルでよく見られるトラブル、その原因と対処法を解説します。

クリッパー(Clipper)

スポーティーながらエレガントなクリッパーは、特にメタルブレスレットのピンの緩みや抜けに注意が必要です。長年の使用や日常の小さな振動により、ブレスレットのコマをつなぐピンが徐々に緩み、放置すると時計の落下や破損につながるリスクがあります。

「ブレスレットが緩くなった」「ピンが出ている」と感じたら、早めに専門の修理店でピン交換や全体の調整を依頼しましょう。

また、クォーツモデルでは時間の遅れや突然の停止が起こることがありますが、これは電池切れだけでなく内部回路の問題の可能性もあります。

特に電池切れのまま長期間放置すると、液漏れで内部部品が腐食することもあるため、不調を感じたら自己判断せず修理店に見てもらうことが大切です。

Hウォッチ(Heure H)

エルメスの象徴「H」がデザインされたHウォッチでは、革ベルトの劣化とケース・ガラスの傷が主なトラブルです。

革ベルトは汗や湿気、摩擦で傷みやすく、ひび割れや剥がれが生じます。エルメスの革は特に水分に敏感なため、劣化が見られたら交換が必要です。専門店では純正品はもちろん、様々な素材や色のベルトに交換して時計の印象を変えることも可能です。

日々の使用で避けられないケースやガラスの細かな傷も、美観を損ねるだけでなく、深い傷は破損につながることもあります。研磨や交換で修復し、時計本来の輝きを取り戻すことができます。

ケープコッド(Cape Cod)

独特なスクエアケースとダブルトゥールストラップが特徴のケープコッドも、Hウォッチと同様に革ベルトの劣化とケース・ガラスの傷が主な懸念点です。

特に手首に二重に巻くダブルトゥールストラップは、より汗や摩擦の影響を受けやすく劣化しやすいため、硬化やひび割れが見られたら定期的な交換をおすすめします。豊富なカラーや素材の中から選べるので、交換によって雰囲気を変える楽しみもあります。

特徴的なスクエアケースは角が傷つきやすく、ガラス面も傷がつくことがありますが、修理店で研磨や交換によりきれいに直すことができます。

定期的なメンテナンスでエルメスの時計を守ろう

はらじゅく時計宝石修理研究所

エルメスの時計は、洗練されたデザインと卓越した技術の結晶であり、持つ人に特別な喜びを与えてくれます。その美しさと機能を長く維持するためには、日頃の丁寧な扱いと定期的なメンテナンスが欠かせません。

私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」では、60年以上の実績や国家資格保持者・熟練職人の技術力など、強みを活かしながら、エルメスをはじめとする多くの時計の修理を承っています。

「大切な時計を長く愛用したい」「他店で断られてしまった故障をなんとかしてほしい」など、お困りの際はJR原宿駅から徒歩1分の当店へぜひ一度ご相談ください。あなたのエルメスを最高の状態でお使いいただけるよう、心を込めてサポートいたします。
» はらじゅく時計宝石修理研究所の詳細へ

 この記事を書いた人        

⚪︎⚪︎のアバター 天野 一啓 はらじゅく時計宝石修理研究所 店長

2018年4月に時計宝石修理研究所へ入社。現在は「はらじゅく時計宝石修理研究所」の店長として、店舗運営と接客、修理対応を担う。厚生労働省認定の国家時計修理技能士資格を取得し、大阪府から時計技能最高優秀賞を受賞。

お客様の大切な想い出が詰まった時計やジュエリーに向き合い、安心して預けられる存在を目指す。スイスの老舗時計工具メーカー・BERGEON(ベルジョン)とのコンセプトショップも展開し、時計修理の魅力発信にも注力。

目次