時計のオーバーホールが不要な場合は本当にあるのか?

大切な時計を長く使い続けるために必要だといわれる「オーバーホール」ですが、ネットや口コミなどで「オーバーホールは不要」という声を見かけた方もいるのではないでしょうか。
実際に不要なケースがあるのか、あるいは本当に必要なのか。本記事では、そんな疑問にお答えしながら、時計の仕組みや注意点を踏まえて解説します。大事な愛用の時計を今後も安心して使うためのヒントになれば幸いです。
なお、私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」は、原宿にある時計と宝石の修理専門店です。高級ブランドからアンティークまで幅広く対応しており、国家資格を持つ職人が丁寧にメンテナンスしています。大手量販店で断られた修理にも対応できる高度な技術力を持っているため、他店で修理できなかった時計もお任せください。
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時計のオーバーホールが不要な場合はあるのか?
時計のオーバーホールについて調べていると、ときどき「不要」という意見を耳にします。なぜそんな声があるのでしょうか。
メンテナンスフリーを謳う時計の増加
近年、クオーツ式やソーラー、電波時計、スマートウォッチなど、定期的なゼンマイ巻きや電池交換があまり必要ないモデルが増えています。そうした時計の特性から「特別な分解整備(オーバーホール)はいらないのでは?」と考える方もいます。
しかし、それらの時計も内部のパーツが劣化しないわけではなく、長年使ううちに油の乾きや部品の摩耗は必ず起こるものです。
機械式時計と比較すると、確かにクオーツやデジタルタイプの時計はメンテナンス頻度が少ないといえます。しかし「メンテナンスフリー」と謳われていても、完全にメンテナンス不要というわけではありません。これがオーバーホール不要説が広がった一因といえるでしょう。
「数年間動いていれば問題なし」という考え方
実際に「長年オーバーホールをしていないけれど平気」という経験談を見聞きすると、「壊れていないのだから大丈夫」と思いがちです。
確かにすぐに壊れない場合もありますが、精度が落ちたり突然止まったりするリスクは高まり、結果的に修理費用がかさむケースもあることを念頭に置きましょう。
車のメンテナンスに例えるなら、オイル交換やタイヤ交換をせずに「まだ走るから大丈夫」と使い続けるようなものです。見た目や表面的な機能は問題なくても、内部では少しずつダメージが蓄積していきます。そのまま使い続けると、ある日突然大きなトラブルに発展することもあるのです。
オーバーホールが”不要に見える”時計の種類
「メンテナンスフリー」とまでは言えないものの、一般的にオーバーホールの頻度が少なく済むと言われるタイプの時計も存在します。
クオーツ式(電池式)時計

1〜2年に一度の電池交換だけでしばらく動いてくれることが多いクオーツ式。
しかし、長く使うほど内部の回路や潤滑油の劣化などが進むため、5年以上のスパンでメンテナンスを検討するのがおすすめです。内部機構に不具合が出てからでは、より高額な修理が必要になる可能性もあります。
電池交換のタイミングで簡単な動作チェックを行うことで、大きな問題を早期に発見できることも多いので、「電池を交換すれば終わり」と考えず、専門店で状態を確認してもらうことをおすすめします。特に防水機能を持つモデルは、パッキンの劣化が進んでいないか定期的なチェックが重要です。
ソーラー・電波時計
光発電や自動時刻修正機能を備えた時計は、日常的に充電や時間合わせの手間がほとんど不要です。
ただしケース内部は精密機械であることに変わりはなく、防水パッキンの劣化や部品の摩耗は起こります。定期点検を行わずに放置していると、気づいたときには修理が難しい状態になっているケースもあります。
特にソーラー時計は、二次電池(充電池)の劣化が進むと充電能力が低下し、やがて時計が止まるようになります。
また、電波時計も内部の受信機構や時刻表示部分に問題が生じることがあります。「自動で直る・充電できる」という安心感から、メンテナンスを忘れがちになりますが、定期的な点検は必要です。
スマートウォッチ
Apple Watchをはじめとするスマートウォッチは、伝統的な機械式時計やクオーツ時計と構造が異なるため、「オーバーホール」という概念自体がありません。
しかしソフトウェアアップデートの打ち切りや電池の寿命など、別の観点で買い替え・修理が必要になることがあり、「完全にメンテナンス不要」というわけではありません。
こちらは「小さいスマートフォン」とイメージすると良いでしょう。むしろ定期的にバッテリーが劣化し、交換や買い替えが必要になります。デザインの飽きも早く、旧型のモデルでは、周りから「古い」とも思われやすいでしょう。
機械式時計が数十年、場合によっては100年以上使えるのに対し、スマートウォッチの寿命は一般的に3〜5年程度と考えられています。その意味では「オーバーホール不要」ではなく「そもそも長期使用を前提としていない」製品といえるでしょう。
オーバーホールをしないリスクとは

「まだ動いているし、定期的にオーバーホールをしなくてもいいのでは?」と感じる方も多いかもしれません。しかし放置した結果起こり得るリスクは少なくありません。
精度低下で実用性が損なわれる
時計は「正確に時間を刻む」ことが最大の役割ですが、オーバーホールを怠ると精度が著しく低下し、時刻合わせが頻繁に必要になることもあります。愛用の時計に対する信頼感が損なわれ、「持っていても使わない時計」になってしまうのはもったいないですよね。
機械式時計の場合、潤滑油の劣化や乾燥によって歯車の動きが滑らかでなくなると、時計の進み・遅れが大きくなります。1日に数分、場合によっては数十分ずつずれていくようになると、実用性が大きく損なわれてしまいます。せっかくの高級時計も、時間が合っていなければ本来の価値を発揮できません。
突然の故障で大きな修理費用がかかる
動作不良やパーツ摩耗を放置していると、歯車やその他内部機構全体にダメージを与え、部品交換が多岐にわたるケースがあります。大切な時計が長期間使えなくなるばかりか、修理費用も跳ね上がり、最悪の場合には「修理不可能」と言われることもあるので注意が必要です。
特に注意が必要なのは、内部に水が入り込むケースです。防水パッキンの劣化を放置していると、汗や雨、手洗い時の水などが内部に侵入し、ムーブメント(時計の心臓部)を錆びつかせることがあります。
一度内部に錆が発生すると、修理が非常に困難になり、部品交換も含めて高額な費用が発生します。日常的に使う時計ほど、定期的な防水性能のチェックが重要といえるでしょう。オーバーホールは腕時計を故障から守り寿命を延ばす上で不可欠なメンテナンスです。
事実、事実、時計の使い方や保管環境によっては、10~15年オーバーホール無しでも致命的な故障なく動いていた例も世の中にはあります。実際にオーバーホールに出してみても部品交換が一切不要で、基本的な分解掃除だけで済んだというケースもあるようです。
しかし、これらはあくまで特殊なケースであり、多くの場合は時間とともに少しずつ不調が蓄積しています。
ゼンマイをしっかり巻けば何とか遅れを抑えられる程度の不具合も、費用面もあって先延ばしにしていると、10年近く経過した頃から遅れが顕著になり、高額修理が必要になることもあります。
オーバーホールを長期間サボると修理費用の増加になるので、注意いただきたいです。
オーバーホールは何のためにするのか

時計を長持ちさせるために欠かせないのが、定期的な内部点検・分解整備です。ここでは、オーバーホールの概要やメンテナンスとの違いを整理します。
分解清掃と部品交換を伴う本格的な整備
オーバーホールは、時計のケースからムーブメント(内部機械)をすべて取り出し、部品ごとに分解して清掃・注油を行う作業のことです。
必要に応じて摩耗したパーツの交換も行い、時計を購入時に近い状態へ回復させるのが目的です。日常的に外装を拭く程度の”メンテナンス”とは違い、専門の知識と技術を要する大掛かりな作業になるため、費用や時間がかかる点には注意が必要です。
機械式時計の場合、内部には数百個の精密部品が組み込まれています。それらが正確に動作するためには、適切な注油が不可欠です。時計用オイルは通常3〜5年程度で劣化するため、定期的な交換が必要になります。
また、部品同士が接触する部分では微細な摩耗が起こり、長年使用していると精度に影響が出ることもあります。こうした問題を解決し、時計の寿命を延ばすのがオーバーホールの役割なのです。
「定期点検」と「オーバーホール」の違い
定期点検は、ケースやブレスレットの洗浄、防水検査、簡単なパーツの状態チェックなど、表面的な確認が中心です。
一方、オーバーホールではムーブメントを含む全体を完全に点検・調整するので、より徹底的なアプローチといえます。「定期点検だけで十分」と考えていても、異常が出た場合はオーバーホールを行ったほうが結果的にコストを抑えられることが多いでしょう。状況に合わせた判断が大切です。
例えるなら、定期点検は「健康診断」、オーバーホールは「全身の詳細検査と治療」のような違いがあります。健康診断で「要精密検査」と言われたら詳しい検査を受けるべきなように、時計も定期点検で少しでも異常が見つかれば、オーバーホールを検討すべきでしょう。
特に大切にしている時計や、高額な時計ほど、適切なタイミングでオーバーホールを行うことで長く使い続けることができます。時計は適切なケアを行えば、何十年、時には何世代にもわたって使い続けることができる貴重な財産なのです。
オーバーホールの頻度と費用の目安
オーバーホールが必要かどうかを判断する材料として、一般的な頻度や費用を知っておくと安心です。
頻度の目安
機械式時計の場合、目安として3〜5年に一度が推奨されます。クオーツ式やソーラー・電波時計に関しては、故障や精度低下が見られない場合はもう少しスパンが長くなる場合もあります。
ただし、「今は大丈夫」と思って放置していると、いざ壊れてしまったときの修理費用が高くなります。普段から精度に変化がないかどうかを確認し、怪しい兆候があれば早めに専門店へ相談するのがおすすめです。
使用頻度や使用環境によっても適切なオーバーホールの間隔は変わってきます。毎日使う時計や、汗をかきやすい環境で使う時計、水に触れる機会が多い時計などは、より頻繁なメンテナンスが必要になるでしょう。
逆に、たまにしか使わない時計でも、長期間放置することで潤滑油が固まり、動かしたときに部品に負担がかかることがあります。大切な時計ほど、定期的なチェックを心がけましょう。
» 時計のオーバーホール頻度について詳しくはこちら
費用の目安
メーカーやモデル、部品交換の有無によっても異なりますが、一般的な機械式時計のオーバーホール費用は数万円〜十数万円ほどが目安です。
クオーツ式でも複雑機構やブランドによって費用は変動します。高級ブランドやアンティーク時計になると、希少パーツの取り寄せや専門技術が必要になるため、さらに高額になるケースもあります。長く愛用する時計ほど、こまめなメンテナンスが結果的にコスト面でも優位になる場合があります。
例えば、一般的な機械式時計の場合、基本的なオーバーホールは3〜5万円程度、高級ブランドの機械式時計では7〜15万円程度、さらに複雑機構(クロノグラフやカレンダー機能など)が付いているモデルでは20万円を超えることもあります。クオーツ時計の場合は、一般的なモデルで1〜3万円程度が目安になるでしょう。
ただし、これらはあくまで標準的な費用で、実際の状態や必要な部品交換によって変動します。修理前に必ず見積もりを確認し、納得した上で依頼することをおすすめします。
» 時計のオーバーホール料金について詳しくはこちら
オーバーホールが不要かどうか迷ったら専門家に相談すべき

「実際にまだ壊れていないし、このまま使い続けても問題ないかもしれない」。そう迷ったときにはどうすれば良いのでしょうか。
専門店に相談して実際の状態をチェックすべき
もし、「オーバーホールをするほどではないかも」と感じていても、一度専門店で実際の状態を見てもらうのがおすすめです。簡単な点検だけなら無料で行う店舗も多く、現在の劣化具合やリスクを把握できます。
私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」は時計修理専門会社として、どのような状態の時計でも丁寧に点検し、必要な整備内容をわかりやすくご説明いたします。自分で判断がつかない場合は、一度ご相談ください。
時計の状態は外観だけでは判断できないことが多いので、プロの目で確認することが重要です。例えば、精度の低下、リューズ(竜頭)の操作感の変化、防水性の低下など、使用者が気づきにくい変化も専門家なら見抜くことができます。それによって、「今すぐオーバーホールが必要」なのか「もう少し様子を見ても大丈夫」なのかを適切に判断できるでしょう。
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当社では他店で断られた修理にも対応可能
当社には国家資格を保有するスタッフや、長年時計修理に携わってきた熟練職人が在籍しています。
そのため、大手量販店や他の修理店で断られたアンティーク時計・古いモデルでも修理・整備対応が可能です。口コミ件数も業界トップクラスで、さまざまな時計を数多く修理してきた実績があるので、安心してお任せください。
特に、生産終了から長い時間が経過したモデルや、メーカーが修理対応していないアンティーク時計の場合、一般的な修理店では「部品がない」という理由で断られることが少なくありません。当社では豊富な在庫パーツを保有しているほか、必要に応じて部品を独自に製作することも可能です。「もう修理できない」と諦めていた大切な時計でも、ぜひ一度ご相談ください。
「オーバーホール不要」ではなく「賢いメンテナンス計画」を

「オーバーホール不要」と言われる時計にも、見えないところで劣化が進んでいる可能性があります。症状が出てからでは遅いこともあるため、まずは専門店での点検を受け、今後のメンテナンス方針を検討してみてはいかがでしょうか。
当社は創業60年の信頼・年間30,000本以上の業界修理本数No.1を誇る老舗の修理専門店です。芸能人御用達(千原ジュニア、トータルテンボス藤田、演歌歌手の五木ひろし)としても多くの方にご利用いただくなど、豊富な実績と信頼を積み重ねてまいりました。駅から徒歩3分・土日も営業しておりますので、忙しい方も是非お越しください。
時計は正しくケアすれば、何世代にもわたって使い続けることができる貴重な財産です。「オーバーホールは不要」という表面的な情報に惑わされず、大切な時計に適切なケアを行うことで、その価値を長く保ち続けることができるでしょう。少しでも不安や疑問があれば、ぜひ当社までご相談ください。熟練の職人が、あなたの大切な時計を責任を持ってケアいたします。
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