タグホイヤーのリューズが引き出せない?原因と対処法

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野 一啓です。
愛用しているタグホイヤーのリューズが引き出せないと、「もしかして故障?」と焦ってしまいますよね。特にリューズが固い、あるいは動かない状態になると、無理に力を加えてしまいそうになるかもしれません。リューズが回らない、または空回りするといった症状も不安になると思います。
でも、慌てるのは早いかもしれませんよ。その症状、実はタグホイヤー特有の「ねじ込み式リューズ」の操作方法を知らないだけ、という可能性が結構高いんです。もちろん、中にはリューズが取れたといった物理的な故障や、修理が必要なケースもあります。
この記事では、タグホイヤーのリューズ操作の基本的な巻き方や戻し方から、引き出せない時の原因、ご自身でできる対処法、そして修理が必要な場合の目安まで、分かりやすく解説していきますね。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事でわかること
- リューズが引き出せない最大の理由
- ねじ込み式リューズの正しい操作方法
- 故障が疑われる症状と原因
- 修理が必要な場合の費用目安
タグホイヤーのリューズが引き出せない主な原因

「リューズが引き出せない!」とご相談に来られるお客様の多くは、実は時計の「仕様」をご存じないケースがほとんどなんです。まずは故障を疑う前に、ご自身の時計がどういうタイプか確認してみましょう。
ねじ込み式リューズの正しい外し方
タグホイヤーのリューズが引き出せないと感じる最大の理由、それは「ねじ込み式リューズ」の仕様を知らないだけかもしれません。
特に「アクアレーサー」や防水性の高い「カレラ」などのモデルは、高い防水性・気密性を保つために、リューズがケースにネジのようにねじ込まれているんです。これを「スクリューダウン・クラウン」とも呼びます。
このタイプは、まずリューズのロックを解除しないと、絶対に引き出せない構造になっています。これを知らずに力任せに引っ張るのは、内部の軸(巻真)が折れる原因になるので絶対にダメですよ。
リューズの「ロック解除」(開け方)
まずはリューズを「反時計回り」(左回り)に、優しく回してみてください。ネジを緩めるイメージですね。力を入れる必要はありません。数回(モデルによりますが3〜5回転ほど)回すと、ネジの抵抗がなくなり、バネの力でリューズが「ポン」と少し飛び出します。これが操作可能な「ポジション0(通常位置)」です。
正しい操作ステップ
- ロック解除:リューズを「反時計回り」に回し、ロックを解除する。(ポンと飛び出す)
- 操作:1段階または2段階引き出し、日付や時刻を合わせる。
- 再ロック:操作後、リューズをケースに「まっすぐ押し込みながら」、「時計回り」に回してロックする。
この「ポジション0」の状態で、初めてリューズを1段引き(日付調整)や2段引き(時刻調整)できるようになります。
操作時の警告
力任せに引き抜くのはもちろん、ロック(閉める)時に斜めにねじ込んだり、強く締めすぎるのもNGです。ネジ山が潰れると、修理が非常に高額(最悪ケース交換)になる可能性もありますから、操作は「優しく、まっすぐ」を心がけてくださいね。
腕時計のリューズが引き出せない爪の悩み
ねじ込み式のロックを解除した「ポジション0」の状態でも、「リューズが固くて引き出せない」と感じる場合、特に爪が短い方や、ネイルをされている方は操作しにくいかもしれませんね。
リューズの頭にある溝に爪の先を引っ掛けるのが基本ですが、それが難しい場合は、無理に爪でこじ開けようとしないでください。爪を痛めたり、リューズに傷をつけたりする可能性があります。
対処法としては、メガネ拭きのような薄くて滑りにくい布をリューズに被せて、布越しに掴んで引き出すと、摩擦が効いて操作しやすくなる場合があります。ただし、これはあくまで応急処置ですね。リューズオープナーのような専用工具もありますが、滑ってケースに傷をつけるリスクが高いので、一般の方にはあまりオススメできません。
ゼンマイの正しい巻き方とは?
ねじ込み式リューズのロックを解除した「ポジション0」(引き出さない状態)。この位置でリューズを「時計回り」(上方向)に回すと、ゼンマイを巻き上げることができます。
タグホイヤーの多くは自動巻きですが、時計が止まってしまった時や、パワーリザーブが不安な時は、手動でゼンマイを巻いてあげると安定して動作しますよ。大体30〜40回ほど、リューズを回す指先に少し抵抗を感じるくらいまで巻けば十分かなと思います。
豆知識:日付変更の禁止時間帯
リューズ操作で注意したいのが、日付の調整です。多くのモデルでは、時計が示す時刻が「夜の20時(午後8時)から翌朝の4時頃」の間は、日付の自動変更機構が動いています。この時間帯に無理やり日付を変えると、歯車が欠けるなど故障の原因になるので避けてくださいね。
リューズの確実な戻し方とロック
日付や時刻の操作が終わったら、時計の防水性能を元に戻すために、リューズを必ず「再ロック」します。これを忘れると、リューズの隙間から湿気や水が入り、内部のサビや故障の致命的な原因になります。
戻し方は、ロック解除の逆ですね。
まず、リューズをケース(本体)側に向かって、指の腹で「まっすぐ」に押し込みます。その押し込んだ状態をキープしながら、リューズを「時計回り(右回り)」にゆっくり回します。ネジが正しく噛み合えば、スムーズに回っていくはずです。
そのまま回し続けて、指先に「キュッ」と軽い抵抗を感じたら、そこでストップ。それ以上、力いっぱい締め込む必要はありません。締めすぎは、内部の防水パッキンを痛めたり、ネジ山を破損させたりする原因になりますからね。
リューズが固い場合の対処法
「操作方法は合ってるはずなのに、リューズが固い」「回すときにゴリゴリ、ジャリジャリする」という場合。これは物理的なトラブルのサインかもしれません。
最も多い軽微な原因は、リューズの根本やネジ溝に、皮脂やホコリが長年蓄積して固着しているケースです。また、内部の潤滑油(グリス)が劣化したり、油切れを起こしている可能性もあります。
ご自身で試せる安全な対処法としては、リューズのロックを解除した状態で、乾いた綿棒や、ティッシュを巻いた爪楊枝などで、見える範囲の汚れを優しくかき出すことくらいですね。ただし、水や洗剤を使うのは絶対にやめてください。
絶対にやってはいけないNG行動
- ペンチや工具で掴む:リューズが傷だらけになり、内部の軸が折れます。
- CRC(KURE 5-56)などを注す:防水パッキンが溶け、ムーブメントが汚染され、時計が完全に壊れます。
- 力ずくで回す:ネジ山が潰れるか、内部の部品を破壊します。
これらの行動は、修理費用を何倍にも跳ね上がらせる原因になります。少しでも「おかしいな」と感じたら、触らずに専門店へご相談ください。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
タグホイヤーのリューズが引き出せない時の故障例

ここまでは主に「操作ミス」や「軽微な汚れ」についてお話ししましたが、残念ながら明らかな「故障」が原因で、タグホイヤーのリューズが引き出せないケースもあります。代表的な症状をいくつかご紹介しますね。
リューズが閉まらない状態とリスク
操作後にリューズをロックしようとしても、「ネジが噛み合わない」「閉めても緩んでくる」という症状。これは非常に危険なサインです。
原因として最も怖いのが、リューズ側、あるいは「ケース本体側」のネジ山が潰れてしまっているケースです。ロック(閉める)時に斜めにねじ込む癖があったり、強く締めすぎたりすると、金属のネジ山が摩耗・破損してしまうんです。
リューズが閉まらないということは、時計の防水性が完全にゼロの状態と同じです。そのまま使用を続けると、ちょっとした手洗いや汗、湿気でも内部に水分が侵入し、文字盤のシミやムーブメントのサビ(水没)を引き起こします。早急な修理が必要ですね。
ゼンマイが巻けず空回りする症状
リューズを回してもゼンマイが巻けず、「スカスカ」「カラカラ」と空回りする感触がある場合。これも典型的な故障です。
原因としては、リューズと内部のムーブメントを繋ぐ「巻真(まきしん)」という金属の軸が折れているか、または抜けかけている可能性が高いです。時計をぶつけた衝撃や、リューズを無理に引き抜こうとした際によく起こります。
また、巻真は正常でも、ムーブメント内部の「キチ車」や「丸穴車」といったゼンマイを巻き上げるための歯車が摩耗したり、油切れでうまく噛み合っていない可能性も考えられますね。
リューズが取れた場合の修理
「リューズがポロっと取れた」というご相談も少なくありません。この場合、2つのパターンが考えられます。
ひとつは、リューズの頭(操作する部分)だけが取れて、軸(巻真)が時計本体に残っているケース。これはリューズヘッドの交換で済む場合もあります。
もうひとつは、リューズが軸(巻真)ごと抜けてしまったケース。これは、内部で巻真を固定している「オシドリ」や「カンヌキ」といった部品の不具合や、サビによる固着が原因です。巻真が抜けた穴からホコリや湿気が入り放題になるので、取れたリューズと一緒に、時計をすぐに修理店に持ち込むことをお勧めします。
無理に自分で元に戻そうとすると、内部の部品を傷つける可能性があるので注意してくださいね。
気になるリューズ交換費用
リューズの故障となると、やはり修理費用が気になりますよね。
ここで非常に重要なポイントなんですが、リューズの不具合は、ほぼ例外なく「オーバーホール(分解掃除)」がセットで必要になるということです。
なぜなら、リューズが固くなったり、錆びたり、取れたりする根本的な原因は、時計内部の「油切れ」「汚れ」「サビ」にあることがほとんどだからです。リューズや巻真だけを交換しても、大元の原因を解決しないと、すぐにまた別の不具合が出てきてしまいます。
タグホイヤー修理費用の目安
あくまで一般的な目安ですが、リューズの不具合修理は「オーバーホール基本料金」+「部品代(リューズ・巻真など)」となるとお考えください。
| 修理内容 | モデルタイプ | 修理専門店の目安 |
|---|---|---|
| オーバーホール | クオーツ (3針) | 39,800円~ |
| オーバーホール | 機械式 (自動巻き) | 39,800円~ |
| オーバーホール | 機械式 (クロノグラフ) | 49,800円~ |
| (OHに追加) | リューズ・巻真交換 | 20,000円~ |
※上記は2024年時点の相場であり、モデルや時計の状態によって大きく変動します。正確な費用は、必ずお見積もり(診断)を受けてご確認ください。
メーカー(正規サービス)に依頼すると、技術的な安心感はありますが、費用は高額になる傾向があります。
タグホイヤーのリューズが引き出せないお悩み
今回は、タグホイヤーのリューズが引き出せないという問題について、操作方法の確認から故障の例、修理費用までを解説してきました。
まずは慌てずに、ご自身の時計が「ねじ込み式リューズ」ではないか、操作方法は合っているかを確認してみてください。もし、ご自身でのクリーニングや操作確認をしても症状が改善しない場合、あるいは「空回りする」「取れた」「閉まらない」といった明らかな故障のサインがある場合は、無理に触らず、できるだけ早く専門家にご相談くださいね。
私たち、はらじゅく時計宝石修理研究所では、タグホイヤーをはじめ、多くのブランド時計の修理やオーバーホールを承っております。リューズの不具合に関するご相談も大歓迎です。
時計の「あれ?」はご相談ください
「タグホイヤーのリューズが引き出せない」ことでお困りの方は、ぜひ当店までお気軽にご相談ください。経験豊富なスタッフが、お客様の時計の状態を丁寧に診断し、最適なお見積もりをご提案いたします。
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