時計の針が動かない?まず確認すべきこと

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野一啓です。

ふと時間を見ようとしたら、時計の針が動かない状態になっていると、とても焦りますよね。「あれ、故障かな?」「さっきまで動いていたのにどうして?」と不安になると思います。

ひとくちに「動かない」と言っても、秒針だけが動かない場合や、電池交換しても動かない、あるいは秒針がその場で小刻みにピクピクしているだけ、といった症状もよく聞きます。

クォーツ時計や機械式時計、ソーラー時計など、時計の種類によっても原因はさまざまです。もしかしたら、振ると一時的に動くけれど、すぐ止まってしまうこともあるかもしれません。

この記事では、時計の針が動かないという問題に直面した時に、まず考えられる原因と、ご自身でできる簡単な確認方法、そして「これは専門家に見てもらった方がいいな」という修理が必要なケースについて、なるべくわかりやすくお話ししていこうかなと思います。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事でわかること

  • 時計の針が動かない時に考えられる主な原因
  • ご自身ですぐに試せる簡単な対処法
  • クォーツ式、機械式、ソーラー式などタイプ別の違い
  • 修理が必要な症状の具体的な見分け方
目次

時計の針が動かない時の確認点

時計 針 動かない時の確認点

時計の針が動かない時、すぐに「壊れた!」と決めつけてしまうのは、少し早いかもしれませんね。特にクォーツ時計やソーラー時計などは、単純なことで止まっているケースも意外と多いんです。まずはご自身の時計のタイプを確認しながら、いくつか試せることをチェックしてみましょう。

まずは電池切れを疑う

お使いの時計がクォーツ時計(電池式)の場合、止まった原因として最も多いのは、やはり電池切れですね。これはとてもシンプルです。

ただ、時計によっては完全に止まる前に、「もうすぐ電池が切れますよ」というサインを出してくれることがあります。それが「EOL機能(End of Life)」、電池切れ予告機能と呼ばれるものです。

具体的には、秒針が1秒ごとではなく、2秒ごとや4秒ごとにジャンプするように動く症状が出ます。これに気づいたら、それは故障ではなく「電池電圧が下がってきたよ」という時計からの正常な合図です。完全に止まってしまう前に、早めに電池交換を依頼するのがおすすめですね。

電池交換しても動かない場合

ちなみに、「新しく電池交換したのに動かない」という場合は、少し厄介かもしれません。考えられる原因としては、

  • 電池のプラス(+)とマイナス(-)を逆に入れている
  • 電池と時計本体の端子との接触不良
  • 時計の規格と違う電池を入れてしまった
  • 古い電池が液漏れを起こしていて、内部の回路がダメージを受けている

などが考えられますが、もしこれらに当てはまらない場合、もっと深刻な内部トラブル(電子回路の故障や、後述する潤滑油の固着)の可能性も出てきますね。

ゼンマイは巻き上げていますか?

機械式時計(手巻き・自動巻き)の場合は、電池ではなく「ゼンマイ」が解ける力を動力源にしています。ですから、このゼンマイが巻き上げられていないと、当然ですが止まってしまいます。

手巻き式の場合

手巻き式は、リューズ(竜頭)を自分で回してゼンマイを巻き上げます。もし止まっていたら、まずは単純な「巻き上げ不足」を疑いましょう。

完全に停止した状態から、リューズをゆっくりと40回から50回ほど巻き上げてみてください。抵抗が重くなってきたら、それが巻き上がった合図です(無理に巻き続けるとゼンマイが切れる原因になるので注意してくださいね)。これで動き出せば、問題なしです。

自動巻きの場合

自動巻き時計は、腕に着けている時の動き(振動)で、内部のローターという部品が回転し、自動でゼンマイを巻き上げてくれます。

しかし、最近はデスクワーク中心の方も多く、腕の動きが極端に少ないライフスタイルだと、自動での巻き上げが不足し、夜外して朝起きたら止まっていた…なんてことが意外とあります。

止まった自動巻き時計を再び動かす時、時計本体をシャカシャカと「振って」動かそうとする方がいますが、これは内部の精密な部品に負担がかかる可能性があるため、あまり推奨できません

正しい初動は、手巻き式と同じように、リューズを使って手動で巻き上げることです。停止した状態から30回から40回ほどゆっくり回して、ムーブメントに安定した動力を供給してから使い始めるのが、時計にとっても一番優しい動かし方かなと思います。

もしリューズを巻いても「ジジジ」という手応えがなく空回りする感じがしたり、逆に針が逆回転してしまったりする場合は、ゼンマイ自体が切れている可能性が非常に高いです。この場合は部品交換が必要なので、修理に出すしかありませんね。

ソーラー式腕時計の充電不足

シチズンの「エコ・ドライブ」やセイコーの「ソーラーテック」などに代表されるソーラー時計は、文字盤で受けた光を電力に変換して動いています。

このタイプの時計の針が動かない場合、単純に充電が不足しているだけかもしれません。

特に、冬場で長袖の袖口にずっと隠れていたり、使わない時に机の引き出しや箱にしまったままにしていると、光が当たらず充電が空になってしまいます。

まずは時計を明るい光が当たる場所(直射日光や明るい蛍光灯の下など)に置いて、十分に充電されているか確認してみてください。

数時間で動き出すこともありますが、完全に空になっている状態からだと、安定して動作するまでには数日間の充電が必要な場合もありますよ。

電波時計のリセット方法

電波時計の針が動かない、または夜中の3時など、まったく違う時刻を指したまま止まっている場合、多くの人は「故障だ!」と慌ててしまいますが、その多くは故障ではなく「キャリブレーション(調整)エラー」であることが多いです。

考えられる原因としては、

  • 電波の受信エラー(電波が届きにくい場所にいる)
  • 充電不足(ソーラー電波時計の場合)
  • 衝撃や磁気による「基準位置のズレ」

特に多いのが、3つ目の「基準位置のズレ」ですね。時計は落下などの衝撃により、内部で記憶している「0時0分0秒」の位置と、実際の針の位置がズレてしまうことがあります。この状態だと、時計の脳(電子回路)は正しい時刻を把握していても、ズレた手足(針)を動かすので、結果として全く違う時刻を表示してしまうんです。

まずは時計を窓際など電波を受信しやすい場所に置き、「強制受信」ボタンを試してみてください。それでもダメな場合は、「リセット操作」や「基準位置の修正」が必要になります。

この「基準位置の修正」の操作方法は、メーカーやモデル(機種番号)によって全く異なります。

カシオ(G-SHOCKなど)なのか、シチズン(アテッサなど)なのか、セイコー(ブライツなど)なのかで、ボタンの長押し時間やリューズの引き方などが全然違います。これは必ず、ご自身の時計の取扱説明書を確認しながら慎重に操作してください。もし説明書がなくても、メーカーの公式サイトで時計の裏蓋に書いてある「キャリバー番号」などで検索すれば、操作方法が見つかるはずですよ。

磁気帯びによる動作不良

これはクォーツ時計にも機械式時計にも言えることですが、現代の時計トラブルで非常に増えているのが「磁気帯び」です。これは、時計が外部から強い磁気の影響を受けてしまうことを指します。

クォーツ時計への影響

クォーツ時計は、内部のモーター(ステップモーター)に磁石を使っています。そのため、外部から強い磁気を受けると、モーターの回転が妨げられ、針が止まったり、遅れたり、進んだりします。磁気から離せば元に戻ることもありますが、磁気が残ってしまうこともあります。

機械式時計への影響

機械式時計で特に影響を受けるのが、「ヒゲゼンマイ」という髪の毛のように細く精密なパーツです。これが磁気を帯びると、パーツ同士がくっついてしまい、正確な振動ができなくなります。結果として、時間が1日に数分〜数時間単位で大幅に進んだり、最悪の場合は止まってしまったりします。

磁気帯びの予防としては、とにかく磁気を発するものから最低でも5cm、できれば10cm以上は時計を離す習慣をつけることです。特にスマホと一緒に時計を置くのは避けた方が無難ですね。

一度強く帯びてしまった磁気は、自然には抜けません。これは時計修理店にある専門の「磁気抜き(脱磁)」の機械で処置する必要があります。

長針がガラスに接触している

時計をどこかに強くぶつけたり、落としてしまったりした衝撃で、針がわずかに曲がってしまうことも、針が動かない原因になります。

時計の針は、秒針・分針・時針が重ならないよう、非常に狭い間隔で取り付けられています。例えば、衝撃で長針(分針)がほんのわずかに上に反ってしまい、風防(ガラス)の内側に接触してしまうと、その摩擦抵抗で針が止まってしまうことがあります。

分針が文字盤に触れている

逆に、分針が下に曲がってしまい、文字盤や、文字盤に植えられているインデックス(時刻の目盛り)に接触して止まることもあります。または、分針が時針に引っかかってしまうこともありますね。

これはいわゆる「針すれ」と呼ばれる症状です。「秒針だけが動かない」という場合も、秒針が一番外側(ガラス側)にあるため、曲がって分針やガラスに引っかかっているケースが非常に多いです。

これらの物理的な接触や針の外れは、一度時計の風防を開けて針を正しい位置に取り付け直す作業が必要です。これは専門的な技術が必要なので、ご自身で直すのはまず不可能だと思います。時計店での修理が必要になりますね。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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修理が必要な時計の針が動かない症状

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さて、ここまでご自身で確認できることをいくつかお話ししてきましたが、これらを試しても動かない場合、あるいは「明らかに様子がおかしい」という場合は、やはり時計内部に何らかの専門的なトラブルを抱えている可能性が高いです。特に「時計の針が動かない」症状が、これからお話しする内容に当てはまる場合は、内部のダメージが深刻化する前に、専門家による診断を受けた方が良いかもしれません。

内部の油切れとオーバーホール

「クォーツ時計はメンテナンスフリー」と思っている方もいるかもしれませんが、実はクォーツも機械式も、時計である以上、内部にはたくさんの歯車が使われています。そして、その歯車がスムーズに動くためには潤滑油が不可欠です。

この油は、車のエンジンオイルと同じで、永遠に持つものではありません。時間とともに酸化して劣化したり、ホコリと混じって粘り気が出たり、やがては蒸発して固着したりします。

クォーツ時計の場合

油が切れたり固まったりすると、歯車の動きが非常に重くなります。クォーツ時計はモーターの力で針を動かしているので、「電池交換したばかりなのに、1年もしないうちに電池が切れる」といった症状が出始めたら、この油切れのサインかもしれません。モーターが、重くなった歯車を無理やり動かすために、余計な電力を消費してしまっている状態ですね。最終的にはモーターの力が摩擦抵抗に負けて、動かなくなります。

機械式時計の場合

機械式時計の場合はもっと顕著です。ゼンマイの力が、油の切れた歯車の摩擦抵抗に負けた時点で、ピタッと止まってしまいます。

これを解決するには、時計を一度すべて分解して、部品を洗浄し、古い油を取り除き、新しい油を注し直す「オーバーホール(分解掃除)」という作業が唯一の方法です。

オーバーホールは、機械式時計なら3〜5年に一度、クォーツ時計でも7〜10年に一度は行った方が良いとされる、時計を長く使い続けるためには欠かせないメンテナンスです。これを怠ると、油が切れたまま部品同士が擦れ合って摩耗し、いざ修理する時には部品交換が必要になって、かえって高額な修理費用がかかることにもなりかねません。

水分侵入によるムーブメントの錆

時計にとって水は大敵です。「10気圧防水」などの防水時計であっても、それは新品時の性能です。時計の防水性は、リューズや裏蓋、ガラス部分に使われている「ゴムパッキン」によって保たれています。

このパッキンはゴム製なので、経年劣化で硬くなったり、ヒビ割れたりして防水性が落ちてきます。また、リューズが(ねじ込み式の場合)しっかり締まっていない「リューズの締め忘れ」や、時計をつけたままお風呂に入る(お湯や石鹸はパッキンの劣化を早めます)といった使い方でも、内部に水分が侵入することがあります。

そして、一番わかりやすいサインが「ガラスの内側が曇っている」状態です。これは、すでに内部に水分が侵入している決定的な証拠です。

内部に入った水分は、ムーブメントの精密な金属パーツを容赦なくサビさせてしまいます。サビが発生すると、部品が脆くなって折れたり、動きが悪くなったりして、時計は確実に停止します。

水没や曇りに気づいたら、時間との勝負です。「乾かせば大丈夫」と放置するのが一番危険です。サビが広がる前に、一刻も早く修理店に持ち込んでください。内部を乾燥させ、サビが広がる前にオーバーホール(分解掃除)する必要があります。

落下衝撃による部品の破損

先ほどの「針すれ」もそうですが、強い衝撃は時計にとって本当に良くないですね。時計は「精密機械の塊」ですから。

内部では、歯車の軸がわずかに曲がったり、歯が欠けたりするだけで、全体の動きに影響が出ます。また、機械式時計の心臓部である「テンプ」という部品が損傷すると、時計は動かなくなります。

クォーツ時計の場合も同様で、動力源であるモーター(ステップモーター)が壊れたり、時計の「脳」である電子回路の基盤が損傷したりすることがあります。

特に怖いのが、「見た目は何ともないのに、内部で深刻なダメージを受けている」ケースです。落としたり強くぶつけたりした後から、なんとなく時計の調子が悪い、時間が遅れる、そしてついに止まってしまった…という場合は、内部で何らかの部品が破損している可能性が高いです。

電子回路の故障や深刻な部品破損の場合、修理というよりは「ムーブメント交換」という、機械部分をごっそり交換する対応になることが多いですね。

時計の針が動かない悩みは専門店へ

ここまで、時計の針が動かない様々な原因についてお話ししてきました。ご自身で対処できるものから、専門的な修理が必要なものまで、本当に色々なパターンがあることがお分かりいただけたかなと思います。

クォーツ時計のムーブメント交換や、機械式時計のオーバーホールなど、「修理」となると、やはり費用がいくらかかるか不安になるかもしれません。

正直なところ、修理費用は、時計のブランド(ロレックスなのか、国産ブランドなのか)、機構(シンプルな3針か、クロノグラフか)、そして時計の内部の状態によって、大きく変わってきます。

修理に出すか、それとも買い替えるか、悩むところだと思います。一つの判断基準としては、その時計の購入価格や資産価値、そして何より「思い入れ」がどれだけあるか、ということになるかなと思います。

あくまで一般的な目安ですが、時計修理専門店での料金相場としては、以下のようなイメージを持っておくと良いかもしれません。

  • クォーツ時計のムーブメント交換:数千円〜5万円程度
  • 機械式時計(国産・3針)のオーバーホール:4万円台〜
  • 機械式時計(インポート・3針)のオーバーホール:5万円台〜
  • クロノグラフなど複雑機構:上記にプラス2〜5万円

【重要】これらの数値はあくまで一般的な目安です。メーカーの正規サービスか、私たちのような修理専門店かによっても料金は異なります。正確な費用は、必ず修理店で時計を実際に見てもらい、見積もりを取って確認してください。

最終的な修理の判断は、その見積もり内容と、その時計への思い入れなどを考慮して、ご自身で決定することが何よりも大切です。

もし、ご自身の時計の針が動かない原因がこの記事を読んでも分からなかったり、「これはやっぱり専門家に見てもらった方が良さそうだ」と感じたりしたら、私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」へお気軽にご相談ください。

見積もりは無料でお出ししていますし、なぜ止まってしまったのか、どういった修理が必要なのかを、できるだけ分かりやすくご説明させていただきます。

あなたの大切な時計が、また元気に動き出すお手伝いができれば嬉しいです。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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 この記事を書いた人        

⚪︎⚪︎のアバター 天野 一啓 はらじゅく時計宝石修理研究所 店長

2018年4月に時計宝石修理研究所へ入社。現在は「はらじゅく時計宝石修理研究所」の店長として、店舗運営と接客、修理対応を担う。厚生労働省認定の国家時計修理技能士資格を取得し、大阪府から時計技能最高優秀賞を受賞。

お客様の大切な想い出が詰まった時計やジュエリーに向き合い、安心して預けられる存在を目指す。スイスの老舗時計工具メーカー・BERGEON(ベルジョン)とのコンセプトショップも展開し、時計修理の魅力発信にも注力。

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