時計の水没修理、慌てないで!応急処置と費用を解説

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野 一啓です。

この記事にたどり着いているということは、今まさに大切な時計が水に濡れてしまい、大変慌てている状況かもしれませんね。時計のガラスにくもりや水入りが見えると、本当に焦ると思います。

ポケットに入れたまま洗濯機で回してしまった、急な雨で濡れてから動かない、リューズが閉まっていなかったなど、水没の原因は様々です。防水性能を過信していたけれど、内部に錆が発生したらどうしよう、修理料金は一体いくらかかるんだろう…と、不安でいっぱいかなと思います。

この記事では、そんな緊急事態に直面した方のために、時計のダメージを最小限に抑えるための正しい応急処置の方法から、やってはいけないNG行動、そして気になる修理の費用感まで、順を追って分かりやすくお話ししていきますね。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事でわかること

  • 水没時に絶対にやってはいけないNG行動
  • 自分でできる唯一の正しい応急処置
  • 水没した時計の内部で起きていること
  • 修理にかかる費用や業者の選び方
目次

時計の水没の修理で慌てないために

時計 水没 修理で慌てないために

まずは落ち着いてくださいね。時計が水没してしまった時、最初の数時間の対応が非常に重要になります。ここでは、時計のダメージを広げないために「やってはいけないこと」と「すぐにやるべきこと」を整理します。

まずはNG行動の確認を

良かれと思った行動が、実は時計にとって致命傷になることがあります。以下の行動は絶対に避けてください。

水没時の絶対NG行動リスト

  • ドライヤーで乾かす(温風・冷風問わず)
    一刻も早く乾かしたい気持ちは分かりますが、これは最も危険な行為です。熱風は内部の水分を水蒸気にしてしまい、かえって隅々まで水分を行き渡らせます。さらに、防水の要であるゴムパッキンが熱で変形・劣化し、防水性能を完全に失う原因になります。
  • 時計を強く振る
    中の水を外に出そうと振ってしまうと、一部分に留まっていた水分がムーブメント全体に拡散し、被害を拡大させます。
  • リューズやボタンを操作する
    時刻が合っているか、動いているかを確認したくなりますが、濡れた状態でリューズやボタンを操作すると、そこから積極的に水を内部に引き込むことになります。
  • 自分で裏蓋を開ける
    内部を拭きたいと思っても、専用の工具と知識なしに開けるのは危険です。防水パッキンを傷つけたり、目に見えないホコリが内部に入ったりすると、新たな故障の原因になります。
  • 放置して自然乾燥を待つ
    「そのうち乾くかも」と放置するのが一番良くありません。時計のケースは気密性が高いため、一度入った水分は簡単には蒸発しません。その間にも内部では静かに錆が進行してしまいます。

乾燥剤を使った応急処置の方法

ご自身でできる応急処置は、実はとてもシンプルです。目的は「内部の錆の進行を少しでも遅らせる」ことです。

ステップ1: 外装の水分を徹底的に拭き取る
まずは時計全体の水分を、柔らかく吸水性の高い布(マイクロファイバークロスなどが理想)で優しく、しかし徹底的に拭き取ります。

ステップ2: 密閉容器に乾燥剤と一緒に入れる
時計の外装が乾いたら、ジップ付きのビニール袋やタッパーなどの密閉できる容器に、時計と乾燥剤(シリカゲルなど)を一緒に入れます。お菓子や乾物に入っているもので構いません。

この処置は、あくまで専門家に見せるまでの「つなぎ」です。応急処置をしたら、一日でも早く修理専門店に持ち込んでください。

洗濯してしまった腕時計の動いてる時の対処

「洗濯機で洗ってしまったけど、なぜか時計は動いてる」というケース、たまにあります。これは非常にラッキーなようですが、油断は禁物です。

動いているから大丈夫、と判断してはいけません。内部には確実に水分(しかも洗剤を含んだ水)が侵入しています。今は動いていても、数日後、数週間後に潤滑油が劣化したり、部品が錆び始めたりして、突然動かなくなる可能性が非常に高いです。

洗濯してしまった場合は、海水に浸かった時と同じくらい緊急性が高いと考えて、動いていてもすぐに修理に出すことを強くおすすめします。

水没で時計が動かない原因

水没した時計が動かなくなる主な原因は、やはり「錆(さび)」です。

時計の心臓部であるムーブメントは、無数の小さな金属部品(歯車やネジ)で構成されています。特にリューズとムーブメントを繋ぐ「巻き芯」という部品は鉄製が多く、非常に錆びやすい部分です。

一度錆が発生すると、その錆の粒子が他の歯車に噛み込んで動きを止めたり、部品同士が固着したりして、時計は動かなくなります。

他にも、水分がムーブメントの潤滑油と混ざり合って劣化させ、部品同士が金属摩擦を起こして摩耗することも、動かなくなる原因の一つですね。

ガラスの曇りは水没のサイン

「完全に水没はしていないけど、ガラスの内側がうっすら曇る」という症状も、水没の初期サインである可能性が高いです。

寒い場所から暖かい部屋に入った時に一瞬だけ曇ってすぐ消えるのは、内部の空気に含まれる微量な水分による「結露」で、あまり心配ないことが多いです。

しかし、曇りが長時間消えない、あるいは頻繁に繰り返される場合は要注意。これは、リューズの閉め忘れや、経年劣化で防水パッキンが痩せてしまい、外部から湿気が侵入しているサインです。

この曇りを放置することは、内部でゆっくりと錆を育てているのと同じことです。致命的な故障につながる前に、一度点検に出すのが賢明かなと思います。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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時計の水没の修理依頼と費用の目安

時計 水没 修理依頼と費用の目安

水没した時計の修理をいざ依頼するとなると、やはり「いくらかかるのか」「どこに頼むのがベストなのか」が気になりますよね。ここでは、修理の費用感や依頼先の選び方についてお話しします。

時計修理の値段が決まる仕組み

時計の修理、特に水没の場合は、基本的に「オーバーホール(分解掃除)料金」+「交換部品代」で決まります。

水が内部に入ってしまった場合、まずはムーブメントを完全に分解し、一つ一つの部品を洗浄・乾燥させ、錆や汚れを取り除く「オーバーホール」が必須作業となります。

その上で、洗浄しても再利用が不可能なほど錆びてしまった部品(巻き芯、歯車、文字盤、針など)があれば、それらを新しいものに交換するための部品代が加算されていくイメージですね。

水没の修理代はいくらかかる?

これが一番気になるところだと思いますが、水没の修理代は「水没からの経過時間」と「時計のブランド・機構」によって、本当にピンキリです。

ご注意ください
ここでお話しする費用は、あくまで一般的な目安です。時計の状態やブランドによって大きく変動するため、正確な金額は必ず修理店で見積もりを取ってください。

水没直後で部品交換がパッキン程度で済めば、通常のオーバーホール料金(クオーツ式で30,000円~、機械式で40,000円~90,000円程度)+数千円で収まるかもしれません。

しかし、放置して錆が広がり、文字盤や針、ムーブメントの多くの部品交換が必要になると、修理代が10万円、20万円と高額になることも珍しくありません。特に海水の場合は進行が早いので、1日の遅れが数万円の差になることもあります。

メーカーと専門店の比較

修理の依頼先は、大きく分けて「メーカー(正規サービス)」と「私たちのような時計修理専門店」の2択があります。それぞれに良い点がありますね。

  • メーカー(正規サービス)
    メリットは、100%純正部品で修理される「絶対的な安心感」です。そのブランドの基準で完璧に仕上げてくれます。デメリットは、修理料金が専門店に比べて高額になりがちなことと、納期が数ヶ月単位と長くなる場合があることです。
  • 時計修理専門店
    メリットは、料金がメーカーより比較的安価であること、納期が早いこと(2週間~1ヶ月程度が目安)です。「使える部品は使う」といった、予算に応じた柔軟な対応が相談しやすいのも特徴かなと思います。

どちらが良いかは、時計の価値観やご予算次第ですね。原宿エリアでの修理店の選び方については、こちらの記事も参考になるかもしれません。

修理業者の選び方のポイント

もし修理専門店に依頼する場合は、信頼できるお店を見極めることが大切です。いくつかチェックポイントを挙げておきますね。

優良な修理専門店の見極め方

  1. 技術者の資格
    ウェブサイトなどに「1級時計修理技能士」という国家資格を持つ技術者が在籍しているかを確認すると良いと思います。これは高度な技術力の証明になります。
  2. 明確な見積もり
    作業を始める前に、必ず詳細な見積もり(基本料金や交換部品代)を提示してくれるお店を選びましょう。
  3. 修理後の保証
    自社の技術に自信があるお店は、修理後に「1年間」などの保証を付けている場合がほとんどです。

宅配修理のメリット

「近くに信頼できる修理店がない」「忙しくてお店に行く時間がない」という方も多いと思います。

そうした場合、宅配便での修理受付は非常に便利な選択肢です。今や多くの優良な修理店が、全国対応の宅配修理を行っています。

自宅にいながら、全国の優れた技術者に修理を依頼できるのが最大のメリットですね。詳しくは、当店の持ち込み・宅配修理のご案内もご覧いただければと思います。

時計の水没の修理は専門家へ

ここまで、水没時の応急処置から修理の費用感までお話ししてきました。

一番お伝えしたいのは、「水没修理は時間との勝負」だということです。応急処置はあくまで時間稼ぎでしかありません。内部の錆は、あなたが思っているよりもずっと早く進行します。

大切な時計を救う可能性を少しでも上げるために、応急処置をしたら、どうか一日でも早く、信頼できる専門家にご相談ください。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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 この記事を書いた人        

⚪︎⚪︎のアバター 天野 一啓 はらじゅく時計宝石修理研究所 店長

2018年4月に時計宝石修理研究所へ入社。現在は「はらじゅく時計宝石修理研究所」の店長として、店舗運営と接客、修理対応を担う。厚生労働省認定の国家時計修理技能士資格を取得し、大阪府から時計技能最高優秀賞を受賞。

お客様の大切な想い出が詰まった時計やジュエリーに向き合い、安心して預けられる存在を目指す。スイスの老舗時計工具メーカー・BERGEON(ベルジョン)とのコンセプトショップも展開し、時計修理の魅力発信にも注力。

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