時計のリューズ交換、その修理費用と原因を解説

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野 一啓です。
腕時計のリューズが取れたり、抜けた、あるいは固い、空回りするといった症状でお困りの状態かなと思います。リューズが閉まらない(ロックできない)状態や、錆び、腐食が見られると、修理費用がいくらかかるのか、そもそも自分で直せないか、応急処置はどうすればいいか、不安になりますよね。
特に時刻合わせや日付調整、ゼンマイ巻き上げができなくなると、本当に困ってしまいます。リューズの不具合は、油切れや部品劣化、衝撃、水分の侵入など、さまざまな原因から起こるんです。
この記事では、時計のリューズ交換が必要になる原因や症状、放置するリスク、そして修理の方法について、時計修理の仕事に従事する私なりの視点で解説していこうと思います。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事でわかること
- リューズが故障する主な原因と症状
- 故障したリューズを放置する重大なリスク
- 自分で修理しようとすることの危険性
- 修理の依頼先(メーカー・専門店)の違いと費用目安
時計のリューズ交換が必要な症状

時計のリューズトラブルと言っても、症状はさまざまです。まずは「どういう状態なのか」を把握するのが大事かなと思います。代表的な症状と、そのウラに隠れているかもしれない原因を見ていきましょう。
リューズが取れた修理
一番びっくりするのが、リューズがポロッと取れてしまうケースですよね。これは、大きく3つのパターンに分けられると思います。
1. 巻真(まきしん)ごと抜けた
リューズを引いたら、中心の細い棒(巻真)と一緒にスポッと抜けてしまう状態です。これは時計内部で巻真を固定している「オシドリ」っていう部品が摩耗したり、破損したりしている可能性が高いですね。
2. 巻真が折れて取れた
リューズは取れたけど、折れた巻真の一部が時計内部に残ってしまっている状態です。時計をぶつけたり落としたりした時の衝撃や、金属疲労が原因かもしれません。
3. リューズだけが外れた
巻真は時計に残ったまま、リューズ本体だけがネジ部分から外れてしまう状態です。もし他の部品に損傷がなければ、これは比較的簡単な修理で済むこともあります。
どのケースでも、取れたリューズや部品は絶対に捨てずに、修理に出すときに一緒に持っていきましょう。それが修理費用を抑えることにも繋がるかもしれません。
リューズが閉まらない原因
これは特にダイバーズウォッチなど、防水性を重視した「ねじ込み式リューズ」によく見られるトラブルです。
リューズを操作した後、元通りケースにねじ込んでロックしようとしても、うまく閉まらない、またはスカスカする感じがする状態ですね。
原因として考えられるのは、リューズ側か、ケース本体側のネジ山が摩耗してすり減ってしまっていることです。防水時計にとって、これは致命的な不具合と言えます。ここが閉まらなければ、時計の心臓部への扉が開けっ放しになっているのと同じですからね。
固い・空回りする時の原因
リューズ操作がいつもと違う、というのも大事なサインです。
- リューズが固い・重い: ゼンマイを巻く時や時刻合わせで、異常に重く感じる場合。内部の部品の油切れやサビ、ゴミの混入が考えられます。ここで無理に力を加えると、内部の繊細な歯車が欠けてしまう危険があるので、絶対にやめてください。
- リューズが空回りする: ゼンマイを巻こうとしても、スカスカして手応えがなく、力が伝わらない状態。これは内部の歯車が摩耗したり、破損したりしている可能性が高いですね。
無理な操作は絶対に禁物!
リューズが固い時に「力を入れれば動くかも」と回すのは、時計にとって一番やってはいけないことの一つです。内部の部品を壊してしまい、修理費用が余計にかさんでしまう原因になります。
放置する重大な危険性
リューズの不具合を「まあ、時刻合わせの時だけだし…」と軽く考えて放置してしまうのが、実は最も危険です。
故障したリューズ、特に抜けて穴が開いたり、閉まらなくなったりした状態は、時計の「防水性」と「防塵性」が完全に失われたことを意味します。
こうなると、雨や手洗い時の水しぶき、汗や湿気がいとも簡単に時計内部に侵入してしまいます。
内部損傷は連鎖する
水分が一度入ると、内部で何が起こるか。
- まず風防(ガラス)の内側が曇ります。
- やがて精密な歯車や巻真が錆び始めます。
- 錆はムーブメント全体に広がり、部品を固着させます。
- さらに、文字盤にシミを作ったり、針を腐食させたりします。
文字盤や針がダメージを受けると、交換するしかなくなり、修理費用は一気に数万円、数十万円と跳ね上がってしまいます。リューズだけの修理で済んだはずが、放置したせいで時計全体のオーバーホールどころか、部品交換で高額になってしまうんです。
リューズの不具合は、内部の潤滑油切れやパッキンの劣化が根本的な原因であることも多いです。「まだ動いているから」と放置するリスクについては、時計オーバーホールをしない場合のリスク解説の記事でも触れていますが、まさにその入り口がリューズの故障なんですね。
リューズの外し方と内部構造
「リューズの外し方」を調べて、ご自分で何とかしようと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、私は絶対におすすめしません。
リューズは、ただケースに刺さっているだけではないんです。
リューズの先には「巻真(まきしん)」という細い軸が繋がっており、その巻真がムーブメント(機械)内部にある「オシドリ」や「裏押え」といった非常に繊細なレバー部品によって固定されています。
リューズを抜く(外す)には、専用の工具でムーブメントの特定の箇所(これがまた小さいんです)を押しながら、絶妙な力加減で引き抜く必要があります。
知識がないまま無理に押し込んだり、違う場所を押したりすると、いとも簡単に内部のレバーが折れたり、変形したりします。そうなると、まさに「修理」が「故障」を生む最悪のパターンになってしまいますね。
自分で直すリスク
リューズ交換を自分で(DIYで)試みることには、大きなリスクが伴います。
安価な修理キットも売られていますが、プロが使う専用工具とは全く別物です。時計の裏蓋を開けるオープナー一つとっても、時計に傷をつけないよう精密に作られています。
最大のリスクは、やはりムーブメント(機械)本体へのダメージです。先ほどお話しした内部レバーの破損だけでなく、作業中に微細なホコリが内部に入り込むだけでも、時計の精度は狂ってしまいます。
さらに、DIY修理では防水性の保証が不可能です。プロはリューズ交換やオーバーホールの後、必ず専用の防水試験機で圧力テストを行い、時計の気密性が保たれているかを確認します。この工程抜きに、大切な時計を水気にさらすのはあまりにも危険かなと思います。
応急処置としてできること
もしリューズが抜けてしまったら、ご自身でできる最善の応急処置は「修理」ではなく「保護」です。
- 抜けたリューズや部品を、決して無理に戻そうとしないでください。
- 取れた部品はすべて大切に保管してください。
- 時計本体の穴からホコリや湿気が入らないよう、セロハンテープなどで優しく塞いでください。そして、できるだけ早く専門家へご相談ください。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
時計のリューズ交換の依頼先

では、時計のリューズ交換はどこに頼むのがベストなんでしょうか。主な選択肢は「メーカー(正規サービス)」と、私たちのような「時計修理専門店」の2つになると思います。それぞれの特徴を知っておくのが大事ですね。
メーカーと専門店の違い
どちらが良いかは、何を優先するかによりますね。
| 項目 | メーカー正規サービス | 独立修理専門店 |
|---|---|---|
| 料金 | 高額になる傾向。オーバーホール必須の場合が多い。 | 比較的安価。柔軟な対応が期待できる。 |
| 納期 | 数週間~数ヶ月。海外送りだと半年以上も。 | 数日~4週間程度と、比較的早い。 |
| 部品 | 100%純正部品。安心感は高い。 | 純正部品や高品質な代替部品(ジェネリック)を使用。 |
| 柔軟性 | 基準が厳格で、ヴィンテージ品は断られることも。 | メーカー修理不可の時計も修理できる可能性がある。 |
保証期間内や、資産価値を最優先するならメーカー。費用を抑えたい、早く直したい、あるいはメーカーで断られた時計なら修理専門店、というのが一つの目安になるかなと思います。
依頼先の選び方については、正規店と専門店の料金・選び方の比較記事も参考になるかもしれません。
プロの修理方法
私たちのような修理専門店では、リューズ交換をこんな流れで行うことが多いです。
-
- 診断: まず、損傷がリューズだけなのか、内部の機械にまで及んでいるかをしっかり診断します。
- 分解: 専用の工具で裏蓋を開け、ムーブメントを丁寧に取り出します。
- 部品交換: 折れた巻真が残っていれば除去し、新しい巻真をその時計のケースに合う正確な長さにミリ単位で切断・加工します。ここに技術が要るんですね。そして新しいリューズを取り付けます。
- 洗浄と再組立て: ケース内部の汚れを洗浄し、新しいパッキン(防水ゴム)を装着して、ムーブメントを慎重に戻します。
- 検査: 最後に、時刻合わせやカレンダーが正常に動くか、そして専用の機械で防水テストを行って、作業完了です。
修理にかかる費用は?
一番気になるところですよね。ただ、これは時計のブランドや故障の状態によって本当にピンキリなので、あくまで「一般的な目安」として聞いてください。
費用目安(修理専門店の場合)
- 簡単な取付け: 巻真からリューズが緩んで外れただけ、といった場合、10,000円程度~
- リューズ交換: 国産時計などで汎用的なリューズに交換する場合、10,000円~20,000円程度
- 巻真も交換: 巻真が折れていると追加費用がかかり、合計で15,000円~30,000円以上
ただし、これはあくまで部品交換のみの費用目安です。
ロレックスやオメガといった高級スイスブランドの場合、メーカー正規サービスではリューズ交換だけでもオーバーホールが必須となり、総額で10万円を超えることも珍しくありません。
リューズが壊れた背景に、内部の油切れや錆がある場合、私たち専門店でもオーバーホールを推奨することが多いです。根本原因を解決しないと、またすぐに別のトラブルが起きてしまう可能性が高いからですね。
費用の注意点
ここで提示した金額は、あくまで一例であり、目安です。時計の状態や使用する部品によって費用は大きく変動します。正確な金額を知るためには、必ず修理店で見積もりを取るようにしてください。
セイコーの修理例
例えば、国産のセイコー(SEIKO)のような時計だと、どうでしょうか。
セイコーの時計は、海外ブランドに比べると部品代も比較的リーズナブルな傾向があります。先ほどの費用目安でいうと、一般的なモデルであれば「国産時計」の範囲(リューズ・巻真交換で10,000円~)で対応できるケースも多いかなと思います。
ただ、グランドセイコー(GS)や、古いヴィンテージモデル、特殊な機構のモデルになると、話は別です。部品が特殊だったり、メーカー対応が必要だったりして、費用も高くなる可能性があります。
セイコーの修理やオーバーホールについては、セイコーのオーバーホール依頼先を比較した記事も書いていますので、よければ参考にしてみてください。
時計のリューズ交換は専門店へ
ここまで、時計のリューズ交換について色々とお話ししてきました。
リューズの不具合は、「ちょっとした部品の故障」ではなく、「時計全体の健康状態に対する緊急警報」だと私は考えています。
その警告を無視して放置すると、防水性が失われて内部が錆びだらけになり、修理費用が雪だるま式に膨れ上がってしまう…。そんな悲しい事態だけは避けたいですよね。
ご自分で修理しようとするリスクも大きいですし、ここはやはりプロに任せるのが一番安心かなと思います。
お困りの際はご相談ください
もし、あなたの大切な時計のリューズが取れた、閉まらない、固いといった症状でお困りでしたら、ぜひ一度「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。
私たちはお客様の時計の状態をしっかり診断し、最適な修理方法をご提案させていただきます。もちろん、お見積もりだけでも大歓迎です。
あなたの大切な時計が、また元気に時を刻み始められるよう、全力でお手伝いさせていただきますね。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
