ロレックス自動巻きがすぐ止まる?原因と対処法を解説

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野一啓です。

愛用しているロレックスが、昨日まで動いていたのにすぐ止まるようになってしまった…そんな経験はありませんか?自動巻きなのに、腕から外して一晩置いただけで止まると、もしかして故障かな?と不安になりますよね。

ロレックスの自動巻きがすぐ止まる原因は、実は一つではありません。単純な巻き上げ不足や、着用時間が短いことによるエネルギー切れの場合もあれば、内部の油切れによるメンテナンス不足、あるいはスマホやPCのそばに置いたことによる磁気帯びが原因かもしれません。場合によっては、落下などの衝撃や、ゼンマイ切れ、ムーブメントの劣化といった、本格的な修理やオーバーホールが必要なケースも考えられます。

この記事では、まずご自身で簡単に確認できることから、専門的な修理が必要なケースの見分け方まで、順を追って分かりやすく解説していこうと思います。皆さんの大切な時計の悩みが、少しでも軽くなれば嬉しいです。

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この記事でわかること

  • 時計が止まる主な原因(故障かエネルギー切れか)
  • ご自身でできる正しいゼンマイの巻き方
  • 放置すると危険な症状の見分け方
  • 修理やメンテナンスが必要なタイミング
目次

ロレックスの自動巻きがすぐ止まる?まず確認する事

時計が止まってしまうと、すぐに「故障だ!」と焦ってしまいがちですけど、まずは落ち着いて確認してほしいポイントがいくつかあります。特に自動巻きの時計は、オーナーさんの使い方によって止まってしまうことも多いんです。

止まったら試す正しい対処法

もし時計が止まっていたら、まず試していただきたいのが「手動での巻き上げ」です。

自動巻き時計は、腕の動きで内部のローターという部品が回転して、ゼンマイを巻き上げます。でも、例えばデスクワークが中心で腕の動きが少なかったり、週末しか時計を着けなかったりすると、ゼンマイの巻き上げが消費するエネルギーに追いつかないことがあるんですね。

これが、いわゆる「巻き上げ不足」という状態で、故障ではありません。現行モデルのロレックスはパワーリザーブ(ゼンマイが全部巻かれた状態から止まるまでの時間)が約70時間と長くなっていますが、一世代前のモデルだと約48時間、つまり丸2日置くと止まるのが通常の動作なんです。

なので、止まっている場合は、まず手動でゼンマイをしっかり巻いてあげることが最初のステップになります。

自動巻きのリューズの正しい操作

ゼンマイを巻くには「リューズ(竜頭)」を操作します。ロレックスの多くは防水性を高める「ねじ込み式リューズ」を採用しているので、少し手順が必要です。

【重要】操作は必ず時計を腕から外して行ってください。

着用したままリューズを巻こうとすると、リューズと内部の機械をつなぐ「巻き芯」という細い軸に無理な力がかかって、曲がったり折れたりする原因になります。

  1. リューズの解放:
    まず、リューズを反時計回り(6時方向)に回します。ネジが緩むと、リューズが「カチッ」と少し外側に飛び出す感触があります。これが操作可能な状態です。
  2. 巻き上げ:
    解放されたリューズを、そのまま時計回り(12時方向)にゆっくりと回します。
  3. リューズを閉める:
    巻き終わったら、リューズをケース側に軽く押し込みながら、時計回りに回して再びねじ込みます。防水性能のために、ここはしっかり締めてくださいね。

操作時の注意点

リューズを解放したり、ねじ込んだりする際に、硬くて回しにくいと感じる場合があります。無理に力を加えると故障の原因になりますので、少しでも違和感があれば操作を中止し、専門家にご相談ください。

正しいゼンマイの巻き方とは

リューズを解放したら、いよいよゼンマイを巻いていきます。

完全に停止した状態からであれば、時計回り(12時方向)に30回から40回ほど、ゆっくりと回してあげてください。ロレックスの公式でも最低25回転は推奨されていますね。

「ジリジリ」とか「チリチリ」といった、ゼンマイが巻き上がる感触が手に伝わってくると思います。これで、パワーリザーブはほぼ最大まで充電された状態になります。

この手動での巻き上げは、例えば「毎朝、時計を着ける前に10回だけ巻く」といったルーティンにするのも、安定した動作のためにはとても良い習慣かなと思います。

ゼンマイの巻きすぎは心配不要

よく「ゼンマイって巻きすぎると切れませんか?」とご質問をいただきます。手巻き式の古い時計だと、巻き止まりがあって、それ以上巻くとゼンマイが切れることがありました。

ですが、現在のロレックスを含むほとんどの自動巻き時計は、「巻き過ぎ」による心配はありません。

ゼンマイが最大まで巻き上がると、それ以上の力がかかっても大丈夫なように「スリッピングアタッチメント」という機構が働いて、力を逃がしてくれるんです。なので、巻き止まりの硬い感触はなく、リューズは回り続けます。

とはいえ、必要以上に力を込めてグルグル回し続けるのは、リューズ周りの部品に余計な負担をかける可能性があるので、目安の回数を巻いたらOKです。

止まった時計を振るのはNG

止まった時計を動かそうとして、本体を激しくシェイクする(振る)のは絶対に避けてください。

自動巻きなので振ればローターが回って動き出す、というのは理屈としてはそうなんですが、効率が非常に悪いですし、何より内部の精密な機械に強い衝撃を与えてしまうリスクがあります。

手動でゼンマイを巻いた後、時計の心臓部であるテンプを始動させるために、手のひらの上で軽く揺らす程度なら問題ありません。ですが、動力確保の手段はあくまでリューズによる手巻き、と覚えておいてくださいね。

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ロレックスの自動巻きがすぐ止まる深刻な原因

ロレックス 自動巻き すぐ止まる深刻な原因

さて、ここまでご説明した「巻き上げ不足」の対処法、つまり手動でしっかりゼンマイを40回ほど巻いたにもかかわらず、やっぱり数時間で止まってしまう…という場合。これは、内部の機械に何らかの問題を抱えている可能性が高いと考えられます。

最近、非常に多いトラブルがこの「磁気帯び」です。

私たちの身の回りには、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットのカバー、バッグの留め具など、強い磁気を発するものが溢れています。機械式時計の心臓部である「ヒゲゼンマイ」という部品は、非常に細い金属でできており、これが磁化してしまうことがあるんです。

磁気を帯びると、ヒゲゼンマイ同士がくっついてしまい、時計の時間が1日に数分から、ひどい時は数時間も一気に進むようになります。そして、磁化の程度が強いと、部品の動きが完全に妨げられて、時計が止まってしまうんです。

磁気帯びの簡易チェック

アナログ式の方位磁石(コンパス)があれば、簡単にチェックできます。コンパスを水平に置いて、針が安定したら、その上に時計をゆっくり近づけてみてください。もしコンパスの針が大きく振れたり、グルグル回ったりしたら、その時計は磁気を帯びています。

(このチェック方法については、時計の電池交換後に止まる原因解説の記事でも触れていますので、参考にしてみてください)

磁気帯びは故障ではなく、修理店に持ち込めば「磁気抜き機」という専用の機械で数分で直ることがほとんどです。費用も比較的安価な場合が多いので、まずは疑ってみる価値ありです。

時間合わせ禁止の時間帯とは

これは時計が止まる直接的な原因とは少し違いますが、止まった時計の時刻を合わせる際に、絶対に知っておいてほしいルールです。

カレンダー(日付)機能付きのモデルには、日付変更の操作をしてはいけない「禁止時間帯」が存在します。

一般的に、夜の午後8時ごろから朝の午前4時ごろまでの間は、時計内部で日付を変更するための歯車が噛み合い始めています。この時間帯にリューズを操作して無理やり日付を変えようとすると、その歯車を破損させてしまう恐れがあるんです。

止まった時計の時刻と日付を合わせる際は、まず針をぐるぐる回して日付が変わるタイミング(深夜0時)を確認し、そこから禁止時間帯を避けた朝の6時や7時あたりまで針を進めてから、日付を合わせるのが安全な手順ですね。

時計の寿命とメンテナンス時期

手巻きをしてもすぐ止まる、磁気帯びでもない。その場合、考えられるのは機械内部の「経年劣化」です。

機械式時計は、たくさんの歯車や部品が動くために、数種類の特殊な「潤滑油」が使われています。この潤滑油が、大体3年~5年ほどで劣化したり、乾いたり、汚れたりしてくるんですね(いわゆる油切れです)。

油が切れた状態で時計を使い続けると、部品同士の摩擦が大きくなり、ゼンマイの力がうまく伝わらなくなって、パワーリザーブが残っていても止まってしまう…というのが、長年メンテナンスされていない時計が止まる典型的な原因です。

ロレックス公式は「約10年に一度」のメンテナンスを推奨していますが、これは最新モデルの性能向上を反映したものでもあります。毎日使われる場合や、少し前のモデルであれば、やはり5年~7年くらいがメンテナンス(オーバーホール)の安全な目安かなと、私は思います。

10年放置でゼンマイが破損したケースも

以前、購入から10年以上メンテナンスをされていなかった時計が、突然止まったと持ち込まれたことがあります。原因は、油切れのまま使われ続けたことによるゼンマイの破損でした。放置する期間が長いほど、こうした深刻な故障に繋がるリスクは高まってしまいます。

(詳しくは、10年間オーバーホールしなかった時計の末路を解説した記事でもご紹介しています)

修理はオーバーホールが必要

内部の油切れや部品の摩耗、あるいはゼンマイ切れや、落下などの衝撃による部品の破損が原因である場合、その根本的な解決策は「オーバーホール(分解掃除)」しかありません。

オーバーホールというのは、時計を一つひとつの部品レベルまで完全に分解し、専用の機械で洗浄し、摩耗した部品があれば交換し、新しく潤滑油を注しながら再び組み立てる、という作業です。時計の健康診断であり、大手術でもある、といったイメージですね。

これにより、時計は新品に近い性能を取り戻すことができます。費用はかかりますが、大切なロレックスを長く使い続けるためには、必要不可欠なメンテナンスです。

どこに依頼すべきか、費用はいくらくらいか、といった疑問については、こちらの記事も参考にしてみてください。

▼あわせて読みたい
時計のオーバーホールはどこで?正規店と専門店の料金・選び方

ロレックスの自動巻きがすぐ止まる悩みは専門店へ

ロレックスの自動巻きがすぐ止まるという症状には、ご自身で解決できる「巻き上げ不足」から、専門的な修理が必要な「磁気帯び」や「内部劣化」まで、様々な原因が考えられます。

まずはご自身で手巻きを試してみて、それでも改善しない場合や、時間の大幅な進み、異音など、何か少しでも「いつもと違うな」と感じることがあれば、無理に使い続けたり、ご自身で解決しようとしたりせず、早めに専門家に見てもらうのが一番です。

特に内部の潤滑油や部品の状態は、専門家でなければ正確な判断はできません。最終的な判断は、信頼できる時計修理専門店にご相談されることを強くお勧めします。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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 この記事を書いた人        

⚪︎⚪︎のアバター 天野 一啓 はらじゅく時計宝石修理研究所 店長

2018年4月に時計宝石修理研究所へ入社。現在は「はらじゅく時計宝石修理研究所」の店長として、店舗運営と接客、修理対応を担う。厚生労働省認定の国家時計修理技能士資格を取得し、大阪府から時計技能最高優秀賞を受賞。

お客様の大切な想い出が詰まった時計やジュエリーに向き合い、安心して預けられる存在を目指す。スイスの老舗時計工具メーカー・BERGEON(ベルジョン)とのコンセプトショップも展開し、時計修理の魅力発信にも注力。

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