ボーム&メルシエのオーバーホール!料金・頻度と正規・一般店比較

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野 一啓です。

「そろそろ愛用の時計、メンテナンスが必要かな?」そう思って検索してみると、正規サービスの料金表を見て「えっ、こんなにかかるの?」と少し驚いてしまった経験はありませんか。ボームアンドメルシエのオーバーホールに関する情報は、公式サイトを見ても専門用語が多くて分かりにくいことが多々あります。「正規代理店に頼むのが安心なのは分かるけど、予算オーバーかも…」「街の修理店に出しても大丈夫なのかな?」そんなふうに、選択肢で迷っている方も多いのではないでしょうか。

実は、ただの電池交換のつもりが、気付かないうちに内部で液漏れが起きていて高額修理になるケースや、逆に一般店を賢く利用することで、品質を落とさずに維持費を半分近くに抑えられるケースもあるんです。今回は、長年時計修理の現場に立ってきた私の視点から、オーナー様が損をしないための知識を分かりやすく解説していきます。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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この記事でわかること

  • メーカー推奨のメンテナンス頻度とボーム&メルシエ特有の事情
  • 正規サービスと一般修理専門店のリアルな料金比較表
  • 並行輸入品に対するメーカーの対応と差別の有無
  • あなたの時計に最適な依頼先の選び方と注意点
目次

ボームアンドメルシエのオーバーホールの基礎知識

ボームアンドメルシエ オーバーホールの基礎知識

まずは、なぜ定期的なメンテナンス(オーバーホール)が必要なのか、そしてボーム&メルシエというブランド特有の事情について整理しておきましょう。ここを正しく理解しておくと、無駄な故障を防ぎ、結果的に出費を抑えることができますよ。

ボームアンドメルシエのオーバーホールの頻度は?

ボーム&メルシエの時計を長く使い続けるために、メーカーが推奨しているオーバーホール(コンプリートサービス)の頻度は、一般的に3年から5年に一度とされています。なぜこの期間なのかというと、時計内部の微細な歯車をスムーズに動かすための「潤滑油」が劣化したり乾いたりしてしまうのが、ちょうどこのくらいの時期だからなんです。

もし油が切れた状態で時計を動かし続けると、金属パーツ同士が直接擦れ合い、摩耗して削れてしまいます。こうなると、単なる洗浄や注油では直らず、高額な部品交換が必要になってしまうんですね。

自社ムーブメント「ボーマティック」の場合は?

ここで一つ重要なポイントがあります。それは、お手持ちのモデルが「ボーマティック(Baumatic)」ムーブメントを搭載しているかどうかです。クリフトンなどに搭載されているこの自社ムーブメントは、特殊な高性能オイルを使用しているため、メンテナンスサイクルが5年から7年と長く設定されているのが大きな特徴です。

メンテナンス時期の目安

  • 標準モデル(機械式・クォーツ):3年〜5年ごと
  • ボーマティック搭載モデル:5年〜7年ごと
  • 防水検査(全モデル共通):1年ごと推奨

特に見落としがちなのが、毎年の「防水検査」です。ゴム製のパッキンは、時計を使っていなくても経年劣化で硬くなり、弾力性を失います。気付かないうちに防水性が失われ、汗や湿気が侵入して錆びの原因になることが非常に多いため、夏前の点検を強くおすすめしています。

放置することの具体的なリスクについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
10年間オーバーホールしなかった時計はどうなってしまうのか?

クォーツモデルに必須の電池交換と注意点

「私の時計は電池式だから、止まったら電池を変えればいいだけ。オーバーホールなんて必要ないでしょ?」と思っていませんか?実は、クォーツモデルこそ注意が必要なんです。

液漏れによる「内部破損」の恐怖

電池が切れたまま長期間放置すると、電池内部から強アルカリ性や強酸性の電解液が漏れ出すことがあります。これがムーブメントの電子回路に付着すると、腐食して完全に壊れてしまいます。これを防ぐためにも、電池切れのサインが出たらすぐに交換が必要です。

また、ボーム&メルシエの正規サービスで提供されている「電池交換サービス(約6,160円)」には、単なる電池の入れ替えだけでなく、防水検査が含まれているのが大きなメリットです。街の安価なショップで電池だけ交換して、防水テストをしなかった結果、手洗いの水などで内部が錆びてしまった…というケースは後を絶ちません。

液漏れのリスク
一度液漏れを起こすと、オーバーホールではなく「ムーブメントごとの交換」が必要になり、修理費用が数万円単位で跳ね上がります。「止まったらすぐ交換」が鉄則です。

正規代理店へのメンテナンス依頼方法

メーカーの正規サービス(リシュモン ジャパン)へ修理を依頼する方法は、ライフスタイルに合わせて主に3つのパターンから選べます。

1. 正規販売店への持ち込み

購入したデパートの時計売り場や、正規販売店に持ち込む方法です。店員さんと対面で相談できる安心感がありますが、販売店によっては手数料がかかる場合もあります。

2. 直営ブティックへの持ち込み

日本橋三越本店や伊勢丹新宿店などの直営ブティックへ直接持ち込む方法です。ブランドのスペシャリストが対応してくれるため、最も確実な方法と言えます。

3. ピックアップサービス(郵送)

Webから申し込み、自宅へ梱包キットを届けてもらい、時計を入れて発送する方法です。近くに店舗がない方や、忙しい方には非常に便利です。

メーカー修理における並行差別の有無

海外ブランドの時計を修理に出す際、時計好きの方が最も気にするのが「並行差別(なみべつ)」と呼ばれる対応の違いですよね。これは、正規店以外(並行輸入店やネットショップ、海外)で購入した時計に対して、修理料金を倍額に設定したり、そもそも修理を受け付けなかったりする制度のことです。

結論から言うと、ボーム&メルシエが属するリシュモングループは、基本的に並行差別を行っていません。

正規店で購入した時計でも、並行輸入店で購入した時計でも、基本的には同じ料金、同じサービス内容でメンテナンスを受けることができます。これは、中古で購入された方や、親御さんから譲り受けた方にとっては非常に嬉しいポイントですね。ただし、修理受付時には国際保証書(ギャランティカード)の提示を求められる場合があるため、保証書は大切に保管しておきましょう。

正規サービスの主なメリットとデメリット

「とりあえず正規に出しておけば安心」というのは間違いではありませんが、正規サービスにも明確なメリットとデメリットが存在します。これらを天秤にかけて判断することが大切です。

正規サービスのメリット

  • 100%純正部品の保証:全ての部品がメーカー純正品で交換されるため、資産価値を維持しやすいです。
  • 安心のメーカー保証:修理後にはメーカー保証が付くため、万が一の不具合にも全国の拠点で対応してもらえます。
  • 外装の輝きが復活:コンプリートサービスには「ライトポリッシング」が含まれており、浅い傷なら綺麗になって戻ってきます。

正規サービスのデメリット

  • 費用が高額になりがち:基本料金に加え、部品代が積み重なると想定以上の金額になることがあります。特に製造から20年を超えたモデルは料金が跳ね上がります。
  • 納期が長い:通常でも1ヶ月以上、本国スイス送り(コンプリートサービス等)になると3ヶ月〜半年かかることも珍しくありません。
  • 柔軟性がない(ポリッシュの強制など):例えば「ヴィンテージの味として傷を残したい」「文字盤は変えないでほしい」といった要望があっても、メーカーの品質基準を満たさないと判断されれば、強制的に交換・研磨されるか、修理自体を断られることがあります。

    東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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ボームアンドメルシエのオーバーホール費用と依頼先

ボームアンドメルシエ オーバーホール費用と依頼先

さて、ここからは皆様が一番気になる「お金」の話です。正規サービスと一般店では、具体的にどれくらいの金額差が出るのか、シミュレーションしてみましょう。

正規サービスと一般店の料金相場を比較

ボーム&メルシエのオーバーホール(コンプリートサービス)料金は、ムーブメントの種類(クォーツか機械式か)と、製造から20年経過しているかどうか(ヴィンテージ区分)で大きく変わります。あくまで目安ですが、比較表を作成しました。

修理内容 正規サービス目安(税込) 一般修理店目安(税込)
クォーツ(電池式) 約43,100円〜 約35,000円〜
機械式(3針ベーシック) 約59,600円〜 約45,000円〜
機械式(クロノグラフ) 約77,200円〜 約55,000円〜
ヴィンテージ(20年以上) 約110,200円〜 要見積もり(柔軟に対応)

※上記の正規価格は記事執筆時点のメーカー参考価格、一般店価格は市場の平均的な目安であり、モデルや状態、為替レートにより変動します。(出典:ボーム&メルシエ公式サイト『サービス価格』)

ご覧の通り、基本料金だけでも一般修理店の方が2〜3割、場合によっては半額近く安くなる傾向があります。特に注目すべきは、製造から20年を経過した「ヴィンテージモデル」の正規価格です。正規店では「修理」ではなく「修復」の扱いになるため、基本料金だけで9万円を超えてしまいます。

一般的なオーバーホール料金の相場感や、なぜ価格差が生まれるのかについては、以下の記事でも詳しくまとめています。
時計のオーバーホールの値段・相場はどれくらいか?メーカーごとに解説

一般修理専門店を利用する際のリスク

コスト面や納期の早さで魅力的な一般修理専門店ですが、依頼する際にはリスクも正しく理解しておく必要があります。

技術力のバラつきと部品の問題

最大のリスクは、店舗によって技術レベルに大きな差があることです。ボーム&メルシエのような繊細な高級時計の扱いになれていない店も存在します。
また、正規店とは異なり純正部品の入手が難しい場合があります。その際、説明なしに互換性のあるジェネリックパーツ(社外品)が使われてしまうと、時計の「純正性」が失われ、将来的にメーカーでの修理を断られる「改造品」扱いになるリスクもゼロではありません。

優良な修理店を見極めるポイント

  • 純正部品の入手ルートを持っているか?
  • 「時計修理技能士」などの国家資格を持つ職人が在籍しているか?
  • 修理後の保証期間(通常6ヶ月〜1年)がしっかり設けられているか?

修理納期を短縮したい場合の選択肢

「来月の結婚式に父の形見の時計を着けていきたい」「プレゼントする予定がある」など、急いで直したい事情がある場合、メーカー修理の納期(通常1ヶ月〜数ヶ月)は大きなネックになります。

そんな時は、一般修理専門店が強い味方になります。店舗にもよりますが、主要な部品の在庫があれば最短2〜3週間程度で仕上げてくれるところも多いです。私たちのような修理専門店では、お急ぎのお客様の事情に合わせて、工程を調整し、可能な限り柔軟に対応させていただくことも可能です。

メーカー修理不可品の対応策

ボーム&メルシエの古いモデル、特に製造から20年以上経過した「ヴィンテージ」モデルや、すでに生産が終了した限定モデルなどは、メーカーで「部品保有期間が終了しているため修理不可」と断られるケースがあります。あるいは、修理可能でもスイス送りとなり、数十万円の「レストレーション(修復)」費用を提示されることも。

そうした「メーカーで断られてしまった時計」こそ、一般修理専門店の出番です。経験豊富な職人であれば、摩耗した部品を新規で作製したり、独自のルートで同型の部品を調達したりして、再び時を刻めるように直せることが多々あります。「もう直らない」と諦めて引き出しにしまい込む前に、ぜひ一度相談していただきたいですね。

ボームアンドメルシエのオーバーホールは専門店へ

ここまで解説してきた通り、ボームアンドメルシエのオーバーホールには、「安心とブランド価値維持を最優先する正規サービス」と、「コストパフォーマンスと柔軟性、スピードを重視する一般修理専門店」という2つの選択肢があります。

もしあなたが、「メーカー保証が切れている」「なるべく費用を抑えてメンテナンスしたい」「古いモデルを大切に使いたい」とお考えであれば、ぜひ一度、私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。

私たちについて
はらじゅく時計宝石修理研究所では、国家資格を持つ熟練の時計修理技能士が、お客様の大切なボーム&メルシエを丁寧に診断いたします。可能な限り純正部品を手配し、お客様の予算やご希望(「傷を残したい」など)に合わせた最適な修理プランをご提案します。

東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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※本記事に記載されている料金や情報は執筆時点のものです。正確な料金は、各店舗やメーカー公式サイトにて最新情報をご確認ください。最終的な修理の判断はお客様ご自身の責任においてお願いいたします。

 この記事を書いた人        

⚪︎⚪︎のアバター 天野 一啓 はらじゅく時計宝石修理研究所 店長

2018年4月に時計宝石修理研究所へ入社。現在は「はらじゅく時計宝石修理研究所」の店長として、店舗運営と接客、修理対応を担う。厚生労働省認定の国家時計修理技能士資格を取得し、大阪府から時計技能最高優秀賞を受賞。

お客様の大切な想い出が詰まった時計やジュエリーに向き合い、安心して預けられる存在を目指す。スイスの老舗時計工具メーカー・BERGEON(ベルジョン)とのコンセプトショップも展開し、時計修理の魅力発信にも注力。

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