ブレゲのオーバーホール料金と頻度は?正規と民間の違いを解説

こんにちは。はらじゅく時計宝石修理研究所、店長の天野 一啓です。
ブレゲといえば、1775年の創業以来、時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチと称されるアブラアン=ルイ・ブレゲの遺伝子を受け継ぐ、まさに雲上ブランドの筆頭ですよね。あの繊細なギョーシェ彫りが施された文字盤や、優雅なブルースチールのブレゲ針を眺めているだけで、所有する喜びが込み上げてくるという方も多いのではないでしょうか。でも、そんな芸術品のような時計だからこそ、維持管理には頭を悩ませてしまいますよね。「そろそろオーバーホールの時期かな?」「正規店にお願いすると高いのかな?」「古いモデルでも修理できるの?」など、不安は尽きないものです。私自身も時計が大好きなので、その気持ちは痛いほどよく分かります。この記事では、そんな皆様の疑問を解消し、大切なブレゲと長く付き合っていくためのヒントをお話しできればと思います。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事でわかること
- ブレゲのオーバーホールにかかる適正な頻度と期間
- 正規サービスと民間修理店の料金や対応の違い
- アエロナバルやマリーンなどモデル別の注意点
- 東京で信頼できる修理依頼先を見つけるポイント
ブレゲのオーバーホールにおける基礎知識

まずは、ブレゲという特別な時計を維持するために知っておきたい、基本的なメンテナンスの考え方についてお話しします。正規サービスと民間修理、それぞれの特徴やコスト感を把握することで、ご自身の状況に合った最適な選択ができるようになります。
推奨される頻度と期間の目安
ブレゲのような極めて精密な機械式時計において、オーバーホールを行うべき頻度は一般的に3年から4年に一度と言われています。ブレゲの公式サイトでも、時計の正常な動作を維持するために3〜4年ごとの点検を推奨しています。
これは、ムーブメント内部の数多くの歯車や軸受に注油されている潤滑油が、経年劣化によって酸化・揮発し始めるのが約3年、そして油膜が完全に切れて部品の摩耗が急速に進むのが5年頃だからです。よく「10年何もしなくても動いている」という話を聞くことがありますが、これは非常に危険な賭けだと思ったほうがいいかもしれません。動いてはいても、内部では油切れの状態で金属部品同士が直接擦れ合い、目に見えない摩耗が進行している可能性が高いからです。
特にブレゲのムーブメントは、部品間のクリアランス(隙間)がミクロン単位で調整されているため、わずかな摩耗や金属粉の発生が、精度の致命的な低下や止まりの原因を招くこともあります。期間に関しては、通常1ヶ月から1.5ヶ月程度が目安ですが、スイス本国への送付が必要な複雑な修理(パーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンなど)になると、半年以上かかることも珍しくありません。愛機としばらく離れるのは寂しいですが、長く付き合うための充電期間と考えていただければと思います。
放置のリスク
メンテナンスを先延ばしにすると、単純な分解掃除(オーバーホール)だけでなく、摩耗した歯車や軸の交換が必要になります。ブレゲの純正部品は非常に高価なため、結果的に修理代が倍近くに膨れ上がるリスクがあります。「まだ動くから」といって放置せず、定期的な健康診断を行うことが、トータルコストを抑える秘訣です。
正規の料金は高いのか検証
「ブレゲの正規修理は高い」というイメージをお持ちの方も多いでしょう。確かに、スウォッチグループジャパンのコンプリートメンテナンスサービスは、決して安い金額ではありません。
例えば、シンプルな手巻きモデルでも約10万円から、一般的なクロノグラフで約15万円から、といった価格設定になっています。さらに、トゥールビヨンなどの複雑機構になると50万円を超えることもあります。しかし、これには理由があります。正規サービスでは、摩耗した部品をスイス純正の新品に交換し、ケースやブレスレットの研磨(ライトポリッシュ)まで含めた「新品に近い状態に戻す」包括的な作業が行われるからです。
一方で、私たちのような民間の時計修理専門店では、使える部品は極力活かしつつ、必要な箇所をピンポイントで整備することでコストを抑えています。一般的に、民間の相場は正規料金の60%〜70%程度(約3.5万円〜10万円前後)で済むことが多く、特に部品交換が不要な定期メンテナンスであれば、非常にコストパフォーマンスが良いと言えます。
正規と民間の料金の違いを分かりやすく表にまとめました。
| モデルタイプ | 正規料金目安 | 民間修理目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| シンプル3針 | 約100,000円〜 | 約75,000円〜 | 最も一般的なモデル。民間でのコスパが高い。 |
| クロノグラフ | 約150,000円〜 | 約99,000円〜 | タイプXXなどが該当。部品数が多い分、技術力が必要。 |
| 複雑機構 | 約500,000円〜 | 要相談/不可 | トゥールビヨン等は要見積。 |
他のブランドも含めた一般的なオーバーホールの相場については、以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
時計のオーバーホールの値段・相場はどれくらいか?メーカーごとに解説
並行輸入や中古品の対応方針
高級時計の世界でよく耳にする「並行差別」。正規店以外で購入した時計の修理代が高くなるという、ユーザーにとっては頭の痛い問題ですが、ご安心ください。ブレゲが属するスウォッチグループでは、並行差別を一切行っていません。
日本国内の正規店で買ったものでも、海外の免税店や並行輸入店で買ったものでも、あるいは中古で購入したものであっても、本物のブレゲであればすべて同じ料金、同じ品質で正規メンテナンスを受けることができます。これは中古市場や並行輸入品を検討している方にとって、非常に大きなメリットですよね。国際保証書(ギャランティ)さえあれば、世界のどこでも等しくサービスを受けられるのは、さすがグローバルブランドといったところです。
ただし、中古品を購入する際は、前のオーナーがどのようなメンテナンスをしていたかが不明な場合も多いです。「オーバーホール済み」と記載されていても、実際には注油のみで済ませているケースもあります。購入直後に一度点検に出して、内部の状態をリセットしてあげるのが、安心して使い始めるためのコツかなと思います。
東京・渋谷エリアで修理をお考えなら、JR原宿駅から徒歩1分とアクセス抜群の「はらじゅく時計宝石修理研究所」にご相談ください。国家資格を持つ修理技能士が、あなたの愛用の時計を丁寧に診断し、最適なメンテナンスをご提案します。他店で断られた修理にも対応可能な場合がありますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
モデル別に見るブレゲのオーバーホール

ブレゲと一口に言っても、実用的なパイロットウォッチから繊細なドレスウォッチまでその種類は様々です。ここでは、代表的なモデルごとのメンテナンスのポイントや、よくあるトラブルについて具体的に解説していきます。
アエロナバルとトランス アトランティック
ブレゲのスポーツモデルとして絶大な人気を誇る「タイプXX」シリーズ。特にアエロナバル(Ref.3800)やトランス アトランティック(Ref.3820)は、90年代の発売以来、ロングセラーとして愛され続けています。
これらのモデル最大の特徴は「フライバック機能」ですが、実はこれがメンテナンス上の注意点でもあります。フライバックは計測中にリセットボタンを押して瞬時に針をゼロ復帰させ、即座に再計測を開始する機構ですが、この動作は内部のハンマーがハートカムを強打することで行われます。機構への機械的負荷が極めて大きいため、頻繁にフライバック操作を行うと、針ズレやリセット不良、クロノグラフ車の摩耗を早める原因になります。日常使いでは、通常のリセット操作(ストップ→リセット)を基本とし、フライバックはここぞという時だけにするのが、時計を長持ちさせる秘訣です。
また、回転ベゼルの数字やマーカーには黒い塗料が充填されていますが、安易な外装研磨(ポリッシュ)を行うと、この塗料が剥がれたり薄くなったりすることがあります。味としてエイジングを楽しむのも一つですが、綺麗な状態を保ちたい場合は、研磨の際に「ベゼルの墨入れ」まで対応できる職人とよく相談することをおすすめします。
タイプxxやタイプxxiのクロノグラフ
先ほどのアエロナバル等も含め、タイプxxやタイプxxiシリーズは、実用的なパイロットウォッチとして設計されています。そのため、正規メンテナンスの料金カテゴリーが一般的なクロノグラフよりも少し安価に設定されていることがあるのは、意外と知られていない嬉しいポイントです(※時期や改定により変動します)。
ただ、タイプxxiに見られるセンターミニッツクロノグラフなど、ムーブメントの構造は非常に複雑です。レマニア製ベースの信頼性の高い機械ですが、長期間油切れの状態で使い続けると、クロノグラフ車などの重要部品が摩耗してしまいます。これらの専用部品は汎用品では代用が効かないため、修理には必ず純正部品が必要となります。
民間の修理店に依頼する場合でも、クロノグラフの調整に慣れた熟練の技術者がいるお店を選ぶことが大切ですね。特にクロノグラフの針回しや帰零(リセット)位置の調整は、技術者の腕が試される部分です。
マリーンやマリーン 2の修理事例
フランス海軍のマリン・クロノメーター(航海用精密時計)の系譜を継ぐ、エレガントなスポーツウォッチ、マリーンやマリーン 2。このモデルで特有のトラブルといえば、「ビッグデイト(ラージデイト)」のカレンダー機構です。
2枚のディスクを組み合わせて日付を表示するこの機構は、視認性が高く美しいのですが、構造的には非常に繊細です。特に「カレンダー操作禁止時間帯」(一般的に夜8時から朝3時頃)にうっかりリューズで日付変更を行ってしまうと、内部のカレンダーディスクの歯車が欠けたり、送りのバネが外れたりする故障が起きやすい傾向にあります。もし日付が変わらない、またはズレるといった症状が出たら、無理に触らずすぐに修理に出してください。
また、マリーンといえばスポーティなラバーベルトが人気ですが、これも経年劣化で硬化したり切れたりする消耗品です。正規で交換するとベルト本体とバックル一式で20万円近くかかることもありますが、定期的に水洗いして汗や皮脂汚れを落とすことで、加水分解を遅らせて寿命を延ばすことができます。民間修理では、ラグの形状が特殊なため汎用ベルトの取り付けが難しいケースが多いので、ベルト交換に関しては正規ルートか専用品を探す必要があります。
クラシックやトラディションの特徴
ブレゲの真骨頂とも言えるクラシックやトラディション。これらのモデルは、極限まで無駄を削ぎ落とした「極薄ムーブメント」や、内部構造を露わにしたスケルトンデザインが魅力ですが、その分デリケートでもあります。
薄いムーブメントは、それを構成する地板や歯車も極限まで薄く作られています。そのため、油切れによる摩耗の影響を、肉厚なスポーツモデルよりもダイレクトに受けやすい傾向があります。スポーツモデルなら多少の衝撃や摩耗にも耐えられるかもしれませんが、クラシックの場合は少しのメンテナンス遅れが、歯車の軸折れなどの致命傷になりかねません。
また、あの美しいコインエッジ(ケース側面のギザギザ模様)や、ケースにロウ付けされたような繊細なラグは、ぶつけると変形しやすい箇所です。特にラグが曲がってしまうと、修復には高度な金属加工技術が必要になります。普段使いの際も、ドアノブや机の角にぶつけないよう、袖口に優しく収めてあげると良いですね。
トゥールビヨンなどの複雑機構
これらの機構は、構造が複雑すぎて一般的な修理店の設備や技術では対応できないことがほとんどです。調整には専用の治具や顕微鏡レベルの作業が必要となり、無理に民間業者で裏蓋を開けてしまうと、取り返しのつかない破損を招く恐れがあります。費用は50万円以上、期間も半年以上かかることが予想されますが、これは数千万円クラスの資産価値を維持するための「必要経費」と割り切るのが賢明です。
東京で依頼するなら専門店へ
正規サービスの安心感は魅力的ですが、コストや納期を抑えたい場合、信頼できる民間修理店の活用も非常に有効です。特に東京には、元メーカー出身の技術者が在籍する優秀な工房が数多く存在します。
お店選びの際は、「ブレゲの修理事例が豊富か」「純正部品の入手ルートや代替案を持っているか」「保証期間があるか」などをチェックしてみてください。特にブレゲのようなハイエンドブランドの場合、ただ動けば良いというわけではなく、外装の美しさや細部の仕上げも重要になります。例えば、私たち「はらじゅく時計宝石修理研究所」も、原宿・渋谷エリアで長年、高級時計の修理に向き合ってきました。国家資格を持つ技術者が、お客様の大切な時計を一本一本丁寧に診断し、最適な修理プランをご提案いたします。
優良な修理店を見極めるチェックリスト
- ウェブサイトに具体的な修理事例(写真付き)や料金が掲載されているか
- 時計修理技能士やWOSTEPなどの有資格者が在籍しているか
- 修理後の保証期間(通常6ヶ月〜1年程度)が設けられているか
- 見積もりの際、リスクや交換部品について丁寧な説明があるか
ブレゲのオーバーホールを依頼するなら
ここまで、ブレゲのオーバーホールについて様々な角度からお話ししてきました。最後に大切なポイントをまとめておきます。
- 基本は3年〜4年ごとのオーバーホールを計画的に行う。
- 正規サービスは並行差別なし。完全なコンディション復帰を求めるなら正規へ。
- コストと期間を抑えたいなら、技術力のある民間修理店も賢い選択肢。
ブレゲは、単に時間を知る道具ではなく、親から子へと受け継ぐことができる素晴らしい「資産」であり「文化」です。適切なメンテナンスさえ続けていれば、その美しい輝きと精緻な動きをいつまでも楽しむことができます。
もし、「自分の時計は今どんな状態なんだろう?」「正規に出すべきか、民間に依頼すべきか迷っている」といったお悩みがあれば、ぜひ一度、私たちにご相談ください。原宿の店舗にて、皆様の愛機にお会いできるのを楽しみにしております。
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