時計宝石修理研究所

REPAIR COLUMN

■「セイコー・エルニクス オーバーホール」

2020.06.01

今や、殆ど見かけることがなくなった、エルニクス…非常に興味深い構造をしております。

 

本モデルの動力は“電池”です。が、調速はいわゆるクォーツではありません。もちろん音叉でもなく…なんとテンプ式なのです。

 

そう、電磁テンプ式といわれる、クォーツが主流になる直前に発売されていました。セイコーの電磁テンプ式はいくつか種類がありましたが、このエルニクスは最晩年のモデルでもあります。

 

1970年代のモデルですが、クォーツ・アストロンが発売されたのが1969年。それから一気にクォーツ時代に突入することになります。電池式ではあるものの、調速はテンプなので、誤差は機械式と大差なく、かつ定期的に電池交換を必要とする…クォーツ式に完全に駆逐されることとなりアッと言う間に姿を消してしまいました。

 

しかしながら、その特殊な構造から愛好家の中ではファンも多く、現在においてもご愛用頂いている方もチラホラお見掛けいたします。

 

この度お承りしたこちらは、1973年に亀戸精工舎が製造を開始したモデルです。諏訪精工舎モデルの6振動から8振動に高振動化しました。こちらは違いますが、アンクルに働きかけるアンクル駆動式のセイコー製電子時計も存在しましたそうです。

 

さて、電池交換でのご依頼でしたが、ピクリとも動きませんでした…製造から40年以上、無理もありません。電子部品に問題がなければいいのですが、まずはお見積りからのご案内となります。

 

時代の過渡期に生み出された希少モデル、今しばらくお待ちくださいませ。

 

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